店の出入口で十分くらい待っていると、小走りで秋汰が駆け寄ってきた。
 まだ雨は小降りだ。

「秋汰、寒くない? フード被っときな?」
「寒いわぁ……春とはいえ、まだ冷えるしなぁ……」
「……だよな。とりあえずこれ着とけよ」

 寒そうにしている秋汰があまりにも可哀想で、俺は着ていたカーディガンを脱いで、秋汰にそっと羽織らせた。

「つむは寒くないん?! 風邪ひくで?」
「俺は大丈夫、別に寒くないし」

 まぁ、でも……リアルな話すると、秋汰の家まで送って自分の家まで歩いてると、さすがに寒すぎて無理かもな……秋汰が風邪ひくよりは全然いいけど。

 ◇ ◆ ◇

 そうしてだべっている間に、秋汰の家へと到着した。

 エレベーターの暖房がすげぇ温かい……

「やっと家やで……ホンマ寒い……」
「家ついたら風呂入って温まれよ?」
「そーするわー……」

 そうこうしているうちに、秋汰の家の前まで着いた。

「じゃあ、また明日な」

 秋汰に軽く手を振り、エレベーターの方へと戻ろうとした瞬間……

「え、上がってかんの?!」

 秋汰は俺の腕を掴んで引き止めた。
 家に上がる……? でも、こんな遅い時間に、迷惑になりそうじゃね……家族もいるだろうし。

「いや、俺は大丈夫」
「絶対寒いやろ?! 服乾かすだけでもした方がええよ?」

 秋汰は掴んだ腕を離そうとしない。こうなった秋汰は割と頑固だ。
 この前の見送りの件もそうだけど、割と意地を張って譲らない。

 これは多分俺が折れるしかないか……
 ありがたく甘えるか。

「ん。じゃあ、お邪魔します……」