桜の花びらをのせた春風が心地よい四月のある日。いつも通り教室に入り、寝起きの頭に痛みを感じさせるほど、賑やかな人混みを抜けて自分の席に座る。


 窓側の一番後ろの席。


 窓を開け、まだ春になったばかりの涼しい風を感じる。
 桜の枝が風に揺れて、雪のように花びらが舞う。

 もうすでにウトウトし始めていると、教室がより一層賑やかになった。



「おはよーさん」



 ふわりと揺れる、明るい栗色の髪の毛。
 パッチリとした目はくしゃっと笑う。


 二年生になって突然関西から引っ越してきたのにも関わらず、すぐにクラスの皆と打ち解け、今ではクラスの中心に立つ人気者。二年A組のムードメーカー的なヤツ。

 関西人特有の賑やかさ。
 誰とでも打ち解けるような人懐っこさ。

 いわゆる”陽キャ”のアイツは、学校生活を寝て過ごしたい根暗な俺とは真逆の存在。

 それは多分誰が見ても一目瞭然。
 普通ならそんな陽キャは俺には構わない。

 

 ――だけどコイツ、茜 秋汰は違った。