そして放課後。
 机から教科書を出し、帰る準備をしている秋汰の隣に行き、声をかけた。

「なぁ、秋汰。一緒に帰らね?」
「おぉ、今日クラスの皆でご飯食べて帰るねんけど、つむも一緒に行かへん?」

 クラスの皆と食事会……
 秋汰に誘われなければ一生関わりのない世界だったと思う。

 まぁ、秋汰が行くなら……ついて行くか。
 三ツ矢さんも来んのかな?

 なんか、あの人はすげぇいい人だし、味方というか……相談相手になってくれそうな気がする。

「ん、行こっかな」
「最近つむ俺に懐いとるな? えらいえらい。って、届かへんし!」

 懐いてるって……元々ベタベタ寄ってきたのはそっちだろ……

 しかも、俺を撫でようとして届かないのか、秋汰はつま先立ちしてプルプルしてる。

 ふっ、かわい……


「はいはい……」

 俺が秋汰の目線に合わせて少しだけしゃがむと、秋汰は満足そうに俺の頭を撫でた。

「ちょっとー、そこ二人! イチャイチャしてないで、行くよー!」
「ちょ、三ツ矢さん……?」
「あはは、やっぱり二人ともお似合いだねー!」

 三ツ矢さんは俺に気を使ってるのか、ウィンクをしながらそう言った。

「やろ? 俺もそうやと思う」

 秋汰まで何乗ってんだよ……
 俺だけ無言を貫くわけも、否定するわけもいかず、反応に困る。
 こういう時なんて返せば正解なんだろーな……

「……ありがとな」
「……?! つ、つむがデレた?!」

 秋汰は、嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねている。
 やっぱり反応間違えた? つか、デレたって……

「マジでうるさい」

 俺はなんだか照れくさくなって、ピョンピョン跳ねる秋汰の頬を片手で掴んだ。

「お邪魔しないようにするけど! 遅れないできてよね〜!」

 三ツ矢さんは俺らに手を振ると、教室を出ていってしまった。

 ……気まずい。

 どんな反応すりゃいいんだ、これ……

「……とりあえず俺らも行くか」
「せ、せやな!」

 秋汰は俺にピタリとくっついてきて、そのまま指定されたファミレスまで向かった。