俺はさっき買ったミントのタブレットを3つ出すと、おもむろに口に含んだ。



 ――そう、その瞬間。


「…………ッ!」
「つ、つむ……?」

 俺は突然の衝撃に、思わずしゃがみこんだ。

 なんだこれ……体が熱い。鼓動がすげぇ早い。
 それに、唇に変な感触が焼き付いてるみたいだ。


 ――まるで、コイツとキスした、あの時みたいな感触が……



「毒、入ってるかも……すげぇクラクラする」
「ど、毒?! これか!」

 秋汰は俺の持っていたミントのタブレットを奪い取り、数個口に含んだ。

 コイツ……何やってんだ? マジで毒だったらどーすんだよ。

 でも、秋汰は何ともないようで、首を傾げていた。

「……? いつも俺これ食べよるけど、なんも変わらんで?」

 じゃあなんだよ、この甘ったるくて、鼻を突き抜けるみたいな冷たい刺激……

 いや、これが普通なのか? でも、なんか……

 やばい、秋汰とキスしたあの瞬間が、鮮明に脳裏に焼き付いてるみたいに、頭から離れない。

 唇の温かさ、柔らかさ……
 マジで、マジで何なんだよこれ……

「それより、ごめんな……俺、つむが一緒やないと寂しいわ……」
「いや……大丈夫。俺こそごめん……」

 少し冷静になろう。と、俺はため息をついて立ち上がった。

 さっきは罪悪感やらなんやらで頭の中がいっぱいだったのに、今はもう気が気じゃない。
 この溢れ出てくる感情が、あの時の情景が止まらない。

 そんな俺の気持ちなど知らずに、秋汰は俺をギュッと抱きしめてきた。


「嫌われたんかと思ったわ……」
「……違う」

 俺の事を強く抱き締め、上目遣いで俺を見つめる秋汰。

 違う、嫌いなんかじゃない。



 ――やっぱり俺、秋汰の事が好きなんだ。