「あのさ……それ、勘違いなんだけど」
「勘違い? 何が?」

「俺が秋汰のこと好きっての……。それに、秋汰もそんなつもりないと思う」

 俺がそう返答すると、三ツ矢さんは腕を組んで黙り込んだ。
 なんか……睨まれてる? いつもの穏やかな感じは、どこいったんだ……

「それ、本気で言ってるの?」
「……? そうだけど」
「だとしたら、津村くん鈍感すぎだよ!」

 三ツ矢さんは俺の机を勢いよく、バン! と叩いた。
 それにビビっている俺をよそに、三ツ矢さんはさらに続けた。

「津村くんは、茜くんのこと好きなんだよ」
「……いや、それはない」

 たった今否定したのに、まだそんなこと言うのかよ……
 俺の気持ちは俺にしか分からない。三ツ矢さんがそんなの知るはずがないのに。

「だって、津村くんが茜くんに見せてる表情、好きな人にだけ見せる表情なんだもん」

 表情? 普段俺、どんな表情で秋汰と話してんだ……? そんなの考えたこと、一度だってなかった。

「津村くん、茜くんの声にいつも振り向いてるし……無意識だとしても、好きなんだよ」
「それは、いつも秋汰といるからだろ……?」

「じゃあ、この前のインスタは? 花乃ちゃんに嫉妬したからストーリーに載せたんでしょ? 自分の方が茜くんに近いって見せるために」

 嫉妬……? たしかに、あの女子と秋汰が付き合うのはすげぇ嫌だけど……
 それに、俺の方が秋汰と近いって……皆に見せたかった……? そんなこと、一ミリたりとも思ってない。

 でも、そういう風に見られてるってことは、俺も無意識にそうなるようにしてたってことか?

 秋汰が隣にいないと、なんだか落ち着かないのも……全部、全部……

 俺が秋汰のこと好きだから……?