「それやのに寝てしまってごめんな」
「ふっ、いーよ。疲れてそうだったし」

 何度も何度も、申し訳なさそうに謝る秋汰が何だか可愛く見えてきて、笑いながらそう答えると、秋汰は何かを思い出したかのように、突然慌て始めた。

「いびきとか寝言大丈夫やった?!」
「マジでヤバかった」
「うそやん! ほんま?!」
「さぁ」
 俺が冗談でそう返すと、秋汰は面白いくらい慌てていた。

 と、そんな冗談で盛り上がっていると……家に着いたようで、秋汰は足を止めた。

「お、ついた。……あれ、優しいつむきゅんは家の前まで送ってくれるん?」
「……うざ。まぁ、いいけど」

 マンションの入口で帰るつもりだったけど、秋汰にそう言われたら……家の前まで送るしかなくなる。

「こうやって遅い時間まで一緒におるの初めてやから、帰るの寂しなるな?」
「まぁな。一緒に日直やることなんてもうねぇと思うし」

 思い返してみたら、こんな時間まで秋汰と一緒にいるのは初めてだった。
 今日は遅くまで二人だったし……たしかに帰るとなると、若干心残りというか、寂しさがないとは言えない。

「なら、またこうやって家まで送ってくれへん?」
「別にいいよ」

 俺の心を読んだかのようなタイミングで、秋汰はそう言った。それに頷くと、秋汰は嬉しそうに微笑んだ。

 そして、エレベーターを降り、家のドアの前で秋汰は立ち止まった。

「じゃあありがとうな。また明日!」
「ん、また明日」

 秋汰に手を振り、家の中に入るのを待つ。
 でも、秋汰は何故か家に入らずにずっと家の前で立ち止まっていた。

「…………」
「…………? 早く家入れよ」
「つむが行かんと入らんで?!」

 なんだこれ……
 わざわざここまで送ったのに、家入る前に帰るとか……なんか納得いかねぇ

「いや、心配だから早く入れよ」
「つむ残して入るの嫌やん……ほら、はよ行って!」
「……はぁ」

 なんかムカついてきたけど、こうやっててもラチがあかない気がしてきた。
 納得いかないけど、仕方ない。と俺はエレベーターの方へと歩き出した。


 ◇ ◆ ◇


「あれ、津村くんがストーリー更新してる。めっずらしー!!」

「えっ、これって……茜くんの寝顔?! 絶対隣で撮ってるよね、この距離! しかも指で茜くんのほっぺつついてるし……! えっ、何これ! 匂わせってやつ?!」