ブチッと音がして司の学ランについていた第三ボタンが私の掌にコロンと転がった。

「え?司、これ……?」

「それ俺の第三ボタン。学ランのボタンにも意味があるらしくてさ、第三ボタンは大事な友達に渡すと一生友達で居られるらしいから……この手紙くれた子に渡してくれる?多分……その子は俺の大事な友達……な気が……るから……」

司の言葉は尻すぼみで最後の方はよく聞こえなかった

「え?」

「いいから、ほら」

「あ、うん……分かった」

私の掌にはさっきまで司の学ランにぶら下がっていた第三ボタンが乗っかっている。本当は私も欲しかった司のボタンだ。

「……てゆうか、本当はその第三ボタン、由花に渡すつもりだったんだけど……モテる俺のせいでごめんな」

「ふっ……はいはい。言ってなよ」

司がニカッと歯を見せて笑う。私は司に私の笑顔だけを覚えていてほしくて、最後にとびっきりの笑顔を返した。

そして家への帰り道をまた並んで歩き出す。今日だけは私は司の隣のとなりじゃなくて、司のすぐ隣に並んでいる。私は残りの家までの帰り道をたわいのない話をしながら何度も司を見上げた。

──最初で最後の司の隣だから。

私は司の隣を歩きながら、掌の中の第三ボタンを見つめた。そして終わりを告げた初恋と共にそっと握りしめた。




2023.3.22 遊野煌

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