「こんな……俺を好きになってくれてありがとう。でも俺は……琴乃が好きだから……気持ちには……どうしても答えられない。本当にごめん……でもその気持ちはすごく嬉しいし……俺きっと一生忘れない」

司は私に向けて言っている訳ではないと分かっていたのに、司の顔がすぐにボヤけるのが分かった。

(……泣いたら司にバレちゃう……)

私は慌てて、またそっぽを向く。そして袖で涙を拭おうとしてその手を司に掴まれた。

「えっ……司?」

握られた手首に顔が熱くなる。

「由花……これ使って」

見れば司から貰った琴乃とお揃いの桜模様のハンカチがそっと私に手渡される。

「え?これ……」

「あ、琴乃が今日の帰り道、もしかしたら由花が泣くかもしれないって言われててさ。もし泣いたらこれ貸してあげてって。で、大丈夫だよって、これからも何も変わらない。ずっと友達だよって伝えてほしいって言われてさ……」

私は目頭に琴乃のハンカチを押し当てた。

(琴乃……気づいてたんだ……)

いつも琴乃からする優しい匂いに涙が止まらなくなる。

「由花、泣くなって……」

司が困った声を出しながら私の震える背中をそっと摩った。

「ごめ……ありがと。ちゃんと……その子に伝えるね」

私は何とか涙を引っ込めるとハンカチを司に返す。司はポケットにハンカチを仕舞うと、学ランのボタンに手をかけた。

「由花、手だして」