「じゃあ、今度は由花の話な。最後だし何でも聞いてやるよ。今でこそ我慢強いけど、由花の泣き虫だったときの子供のとき話でもいいしー、あ、それとも四月から俺と琴乃が隣に居なくて寂しいっていう弱音でもいいぞ」

私は心のモヤを吐き出すように心を整理しながら、言葉を選んでいく。

「……正直、ずっと三人一緒だったから……四月から本当寂しい。初めての一人暮らしだし、今までみたいに悩みがあってもすぐに司と琴乃にあって聞いてもらうこともできないしね」

「いつでも聞いてやるよ、二度と会えない訳じゃねぇんだし」

「うん……」

「まあ、なんだ。琴乃に相談しやすいことは琴乃に言えばいいし、逆に俺に話したほうがラクになること有れば、全然聞くし。琴乃には言わねぇしさ……俺たちの関係は何があってもなんも変わんないから」

司が大きな掌で私の頭をポンと軽く叩いた。

「ちょっ……と」

「……由花も泣きそうになったり、困ったことあればさ、いつでも俺と琴乃を頼ればいいから。俺らずっと友達だからな」

私は滲んできた涙を見られたくなくて司からそっぽを向いて袖で拭く。司は私の方を見ないようにして涙を拭く間、卒業証書を回転させるように晴れ渡った空に放り投げてはキャッチしてを繰り返していた。


「……司、ありがとうね」 

涙を拭いた私に司がほっとしたような顔を浮かべた。

「どういたしまして」 


そして私は司と隣同士の影を眺めながら、深呼吸をひとつしてワザとらしく声を上げた。

「あっ!」

「由花?どした?」

私は意を決して、鞄からソレを取り出した。