「丈二、来なさい」
家に帰ったら両親にリビングへ来るように呼び出された。
リビングに向かうと真剣な顔の両親がいる。
いつもの堕落した顔じゃない。
怒りに満ちた目を僕に向けていた。
「座りなさい」
言われた僕は大人しく座る。
「くるみちゃんから聞いたぞ。お前、塾だと嘘をついて遊んでいたそうじゃないか」
「それは」
「私が話をしているんだ。口を挟むんじゃない!」
言い訳をしようとしたら父さんが怒鳴って遮られる。
「真面目に勉強をしているのかと思ったら、不純異性交遊なんて、どこで育て方を間違えたのかしら」
呆れたように言う母さん。
今までちゃんと教育のようなものはしてこかなった癖にこういう時だけ親みたいにふるまうのか。
「遊ぶために塾へ行かせていたわけじゃない!金が掛かるんだ。真面目にやっていないなら塾はやめろ」
「そんな事!そもそも、なんで油目の話なんか信じているんだよ!」
「うるさい!」
視界が揺れて床に倒れる。
殴られた。
「言い訳をするな!俺に逆らうな!くるみちゃんを傷つけたそうだな!そんな最低な事は許されない!許される事ではない!!」
上から跨るとそのまま父さんは僕を殴る。
母さんは止めない。
それどころか煽っている。
両親は僕よりも油目を優先している。
この家に、僕の居場所はない。
そう思い知らされた。
翌日、僕は家を出る。
その日は雨だった。
傘はどういうわけか一本もなくずぶ濡れで登校する羽目になったが問題で僕は頭がいっぱいだった。
「どうしょう」
両親から携帯電話を取り上げられた所為で明日夢さんと連絡を取ることが出来なくなった。
塾は親からの連絡でやめさせられてしまう。
「驚くだろうな」
何の連絡もないまま、彼女と無理やり別れさせられる。
その事に言葉にできない感情が湧き上がるも、どうすればいいのかわからない。
「キミ、大丈夫かい?」
校舎に入って廊下を歩いていると、教師の一人に呼び止められる。
確か、工藤先生だったかな?
「顔が赤く腫れているね?それにずぶ濡れだ。このままだと良くない。保健室に行って湿布を貰ってくるといい」
「あ、はい」
何があったのか聞かれなかったことに安心しつつも、なんで聞かなかったのだろう?という疑問を抱きながらも保健室に向かう。
「あれは相当、ヤバイね。丁度いいから彼に任せる事にしよう」
工藤先生の呟きは保健室に向かう僕の耳に届かなかった。