「彼女は天国に旅立ったのかな?」
「死後の世界というのものがあるのなら、天国だろうな」

僕と新城は通学路を歩いていた。
明日夢さんの両親から教えてもらったけれど、彼女は満足した表情で眠っていたという。

「天国ならそれは嬉しいな」
「そうか」

新城は立ち止まると僕の名前を呼んだ。

「前に、お前を妖界へ連れてきた理由を話したな」
「うん」
「最後の一つをまだ言っていなかっただろう」

そういえばそうだった。
あの後、バタバタがあってすっかり忘れていた。

「俺がお前を妖界へ連れて行った理由は、お前を守りてとして選んだからだ」
「……守りて?」
「俺は祓う力を持つ、だが、祓う力を持つ者は後方に立ち、術を使う。その為に近付いてくる連中に対処ができない。その祓う力を持つ者を守る者、守りてを必要としている」
「その守りてに僕を?」
「そうだ」
「……どうして?」
「理由はいくつかあるが、最大の理由として俺はお前が気に入った。俺はお前を必要としている。それが理由だ」
「僕を、必要としてくれるの?」
「何度も言わせるな。俺にお前が必要だ」
「……わかった。なるよ。その守りてに」

僕を必要としてくれる人がいることがとても嬉しい。
助けてくれた彼に少しでも恩を返すことができるのなら、僕は力になりたい。
きっと、それが精いっぱい、生きる事に繋がる筈。
彼女の夢を僕が叶える。
どこまでできるかわからない。僕自身も夢がないから。
でも、彼女の願いを叶えてあげたい。
きっと、それが僕の夢になる筈だから。

「あ、待ってよ。新城」

先を歩く彼を僕は追いかける。
少しでも追い付くために走った。






こうして、僕と新城は出会い、怪異の世界へ足を踏み入れる事となる。