「あっ」
「? どうした?」
いきなり百合緋が大声をあげた。
「……学内に知られたらやばいのがいたわ……」
「え? ……あ」
華樹(かき)たちか……。
存在が当たり前すぎてすっかり忘れていたけれど、斎陵学園には御門の人間、なかでも都内にある御門別邸に住んでいる子たちも在籍している。
御門流は京都に本邸があって、引退した祖父・白里がそこの隠居主としている。
仕事柄、都心の方が都合のいい現代なので、白里も現役の頃は都内の別邸に住んでいた。
その家を、今は白桜が主として継ぎ、修行中の御門流の子、三人と、月御門家に預けられている百合緋と一緒に暮らしている。
その中で、華樹と牡丹(ぼたん)が高等部の二年生で、結蓮(ゆいれん)が中等部二年生だ。
「……華樹辺りならもう知ってそうだな……」
白桜の声に哀愁がただよう。
そもそも、天龍(てんりょう)という場所に本邸がある影小路家から斎陵学園に入っている人はいない。
陰陽師としては、まるっきり御門の人間しかいない場所に、黒藤は一人でやってきた。
……華樹たちからしたら喧嘩を売られていると思っただろう。
「あー、華樹なら黒坊見つけたら埋めそうだな」
「怖いこと言うな」
……白桜はちょっと思った。
自分で言って置いてなんだが、気絶した黒を放置してきてしまったな……。
「……無炎」