現在、御門流と小路流が陰陽師二大大家として知られている。

その当主同士で結婚したら、どうなると思っているんだか。

「白桜って頭カタいよね……。だから黒藤は継がないでいるんじゃない」

百合緋から呆れた声が出た。

「その前に俺は女じゃねえっての」

百合緋の前では当主の顔をしなくていいので、つい素になりがちだ。

ぶっちゃけ、胸もなければ生理というやつもない。

はっきりと男の身体でもないが、女性としての機能というやつは失っている。

「白桜、それこそ今のご時世性別なんてどうでもいいのよ」

「……そう言われると反論出来んのだけど……」

百合緋に返された内容は、白桜も肯けるものだ。

だが、こと自分の問題になると、世間的なジェンダーレスで片付く話でもない。

白桜が女性(にょしょう)を失った理由も、男として通している理由も、陰陽師・月御門の人間だから、だ。

「なあ百合姫、さっきの無炎以外に見られていたか?」

「教師の何人かは見てたんじゃない? 教員室の前の廊下だったし。生徒の方は……窓の外から見てる奴いたかどうかわからないけど。わたしが気づいた限りでは廊下にはわたしたち以外いなかったわよ?」

「……訊かれたら答えるのめんどくせーな……」

しかも教師の方かよ。

「自分と黒藤にとったら挨拶です、は?」

「そんなハイカラな人種じゃない」

「……今時『ハイカラ』って言葉使う高校生、確かにそんな挨拶しないわね」

なんか納得された。うんうん、と肯く百合緋。