ふむ。娘はそういう性格なのか。しかし流夜も墓前とはいえ、ずけずけと物を言うヤツだな。
咲桜は「う」と息を詰まらせる。
「まあ、反対されてももらっていきますけど」
「今までの挨拶台無しだよ!」
………。
咲桜に一票。在義、よくこいつを娘の相手に認めたな。
「……結構な性格してますね、娘さんの彼氏」
遠くに見つつ、黒に言えたことかよと思いつつ、しかし白桜は口にはしなかった。
墓石に向かう流夜は続ける。
「いつもの調子、戻ったな」
「う」
「一番は、咲桜に、生きていることを後悔させませんので、ご安心ください」
「―――――――」
涙、だった。
桃子は、娘とその恋人である弟を、ただ、見て、泣いていた。
黒藤から聞いたように、咲桜は桃子の娘で、流夜は戸籍上の弟だ。
真実姉弟ではないから問題は薄いのかもしれないが、実はこの二人、同じ学校の教師と生徒でもある。
どんだけ禁断ぶち抜く気なんだか。
「……ありがとう、ございました」
「「―――」」
桃子が、声を発した。
白桜と黒藤と同時に振り向くと、桃子は泣きそうな顔に笑みを浮かべていた。
「桃子……」
「あの子が……あの子たちが一緒にいることを、在義さんならゆるしてくださいます。だから、わたしはここまで、ということですね」
桃子が、そっと両手を持ち上げた。
その指先から小さな光があふれだし、形を失っていく。……昇天のときだ。
「白桜さん、黒藤さん、……冬芽さんも……ありがとうございました」
「もう、いいのか?」
白桜が問うと、桃子は目を細めて首をかたむけた。