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その再会は突然過ぎて、白桜の占(せん)にも出ていないほどいきなりぶち込まれた現実で、一瞬目の前の奴が本物かどうか疑ってしまった。
だが、その名はすぐに口をついた。
「――黒(くろ)!」
ずっと前に離れ離れになった幼馴染。
白桜が呼びかけるより先に振り向いたのは、前髪に銀色が一房混じった端麗な面立ち。
こちらを見て、ふわりと柔らかい表情になる。
「白(はく)」
――『はく』。白桜をそう呼ぶのは、世界にただ一人だ。
「黒、天龍(てんりょう)から戻ったのか?」
駆け寄った、驚きを隠せない白桜に『くろ』――影小路黒藤(かげのこうじ くろと)は微笑を浮かべる。
「ん。ちょっとあってな」
「お前んとこは色々ありすぎだからなぁ……」
「ま、お互いサマで。それより白、なんでそんな――」
「ちょっと待てーい!」
白桜と黒藤の間に割って入った小柄な少女は、白桜が物心ついたころから一緒にいる水旧百合緋(みなもと ゆりひ)という少女だ。
学内一の美少女と名高く、百合緋を狙う不届き者を追い払うのは白桜の役目だった。
だが実は守り役であるはずの白桜こそ、生徒は男女問わず、教師や果ては保護者までも一度は白桜にときめいたことがある、なんて伝説を持っている。
そういった話に疎い白桜の耳に噂話が入るまいと必死になっている百合緋だ。
綺麗な瞳でキッと黒藤を睨みつける。
「黒藤! なんであんたがここにいるのよ!」
「そりゃあ、転校してきたから?」
このとぼけた感じ、黒藤は変わらないようだなぁ、などと感慨にふけっていると。
「そういう意味じゃないわよ! あんたは影――
「それより白。………」
「? どうした?」
「な、なによ黒藤」
百合緋を遮った黒藤が白桜を見て急に黙ったと思ったら、次の瞬間当然のようにキスされていた。
三秒後、突き飛ばしてからかかと落としを喰らわせた。