「……おい」

「うん?」

「悪目立ちするから離れて歩いてくれないか」

「えー。せっかくの白とのデートな

回転廻し蹴りを腹に喰らわせた。

その場にうずくまる黒藤。

「は、白……言って置くけどこれ、俺じゃなかったらアバラ何本かいってるからな……」

「だからお前しか蹴らねーよ」

まったくこの能天気は。

黒藤と依頼主のところへ一緒に行くことになり、一度帰宅してから合流した。

そしたらこいつ、着流しで来やがった。

…………。

お互い、家柄もあって家では普段着なそれだけど、街中歩くのに着流しって……悪目立ちしかしないだろ。

「白、百合姫は?」

ダメージもすぐ回復したらしい黒藤が、また並んできた。

「家。天音についてもらってる。お前の方は無月だけか?」

「縁は争い事苦手だからな。涙雨は勝手に出歩いてるし」

「るう?」

白桜は初めて聞く名だ。新しい式だろうか。

「あ、白に逢わせたことなかったっけ。涙に雨って書いて、るう。鳥の姿の時空の妖異だ」

「………お前、守備範囲広すぎだろう」

半眼になる白桜。

まさか時空の妖異を配下に置いたとは。

かなり高位の妖異だぞ?

妖異にはそれぞれ属性がある。

白桜の式の無炎は名の通り焔(ほのお)を本質に持つ。天音は戦闘を得意とする戦の妖異。

黒藤の式の縁は、こちらも名前の通り縁(えにし)の妖異。そして無月は夜の妖異だ。

その中でも時空の妖異は、かなり珍しい上に霊力の強いものが多い、高レベルだと言われる。