十秒ほど黙った白桜は、百合緋を見た。

百合緋は目をぱちぱちさせている。

基本的に、小路や御門の人間でない百合緋は仕事の話には関わってこない。

「百合姫や縁や天音がいるだろう」

「人間が百合姫しかいないじゃねえか。そうじゃなくて、その……」

「だからなんだよ。お前一人じゃカタ付けらんねえのか?」

「………」

黒藤は少し考えるように黙ってから、立ち上がった。

そして白桜だけに聞こえるようにと囁いてくる。

「人間に惚れた鬼からの依頼、なんだ……」

「………」

……それは、黒藤の得意分野かもしれないけど、やりたくない仕事だろう。

だから白桜はすぐにこう答える。

「請け負おう」