「黒、少し黙ってここ座れ」
「? うん」
白桜が示したのは四阿(あずまや)の中のベンチ。
そして四阿を覆うように結界を張った。
それに気づいた無炎が慌てて四阿に入ってくる。
ベンチに座った黒を見下ろす白桜。
「お前どこのモンの依頼請けた?」
「は、白? 言い方がチンピラなんだけど……」
「あ?」
ガツンっと音を立てて黒藤が座っているベンチに足を載せる。黒藤の肩が跳ねた。
「お前にまとわりついてんだよ。鬼の気配だな? お前には関係のないスジ。……依頼を請けて転校してきたのか?」
――本来、依頼人のことを訊くのはご法度。
当然、黒藤が教えるとも思っていない。
だからまあ、黒藤が鬼の筋からの依頼を請けていることに、白桜が気付いていることのアピールみたいなもんだ。
――黒藤の急な転校の理由探りでもある。
「………」
反論がなかった。
……おかしいな。いつもなら笑ってはぐらかすんだけど。なんかこいつ真面目な顔してるし。
「………白」
「なんだよ」
「依頼主のことで、お前の意見を仰ぎたい。今日、時間とってもらえないか?」
「………」
今度は白桜が黙る番だった。
黒藤が仕事のことで白桜に意見を求めるなんて、今までにあったか? ないな。
「……なんで俺?」
「それは……」
「はっきり」
「……白は怒るかもしれないけど、俺にとって『一番近い女性』は白だから、……は、白?」
「………」
白桜、思考回路が停止した。