藤谷の家では、彼の妻の泉が温かいハーブティーとマフィンを用意して待っていてくれた。
「朝ごはん、まだでしょ? どうぞ?」
「すみません」
零は促されるまま椅子に腰かけた。
「で、どうしたの? 何かあった?」
藤谷の問いに、零は昨夜のことと咲から教えてもらったことを話した。
「んで、美也ちゃん、いまどうしてるの?」
「まだ寝てると思います。ゆうべ、だいぶん酔っ払ってたし…… すみません、おれの考えなしな行動でいろいろ迷惑かけてしまって……」
「いや、別にこっちは一回ボイトレがキャンセルになったくらいなんだから。まあ、今日は他に仕事もないし、少し休むといいよ。美也ちゃんのことも心配だろうし」
「すみません……」
そうは言ったものの、藤谷は腕組みをして考え込んでしまった。
「小野さんには、あんまり個人的な部分に踏み込んで欲しくないって賀州さん通してちょっと注意してもらおうか……」
「いえ…… それは、おれが直接小野さんに言います。藤谷さんから言うと事務所からの苦言になっちゃうし……」
「それでいいのか? 妙に抉れたり小野さんの態度がはっきりしなかったら、もやもやしたまんまでこのあとレコーディングすることになるぞ?」
「向こうがやめるって言わない限り、おれは最後までやり抜きます」
「できるの?」
「やります…… やらせてください」
零はきっぱりと答えた。
「なんか…… きっちり決着つけないといけないような気がするんです」
「だといいけどねえ……」
藤谷は溜息をついた。
「んで、零は美也ちゃんのことどうすんの? 彼女、零がいない間ひとりになるぞ? 大丈夫か?」
「それは……」
「あの……」
口ごもった零を見て、今まで無言でやりとりを聞いていた泉が口を挟んだ。
「もしよかったら、美也さんお借りできないかな」
「え?」
藤谷と同時に泉を見た。
「あ、美也さんが嫌だったら無理にとは……。わたし、お料理教室やってるの。美也さんならアシスタントしてもらえるかなって…… ちょっと思って。最近生徒さん増えて、手が足らなくて。美也さんならカフェの経験もあるし……」
泉はそう言って
「出過ぎたことだったらごめんなさい」
と、照れくさそうに笑った。
「ちゃんとお仕事としてお支払いもしますから……」
「ありがとうございます」
零は頭を下げた。
「なんか、藤谷さんのところに世話になりっぱなしだ……」
「そう思ってくれるんなら、とりあえず仕事やりきろうな」
「はい」
藤谷の言葉に零はうなずいた。
「朝ごはん、まだでしょ? どうぞ?」
「すみません」
零は促されるまま椅子に腰かけた。
「で、どうしたの? 何かあった?」
藤谷の問いに、零は昨夜のことと咲から教えてもらったことを話した。
「んで、美也ちゃん、いまどうしてるの?」
「まだ寝てると思います。ゆうべ、だいぶん酔っ払ってたし…… すみません、おれの考えなしな行動でいろいろ迷惑かけてしまって……」
「いや、別にこっちは一回ボイトレがキャンセルになったくらいなんだから。まあ、今日は他に仕事もないし、少し休むといいよ。美也ちゃんのことも心配だろうし」
「すみません……」
そうは言ったものの、藤谷は腕組みをして考え込んでしまった。
「小野さんには、あんまり個人的な部分に踏み込んで欲しくないって賀州さん通してちょっと注意してもらおうか……」
「いえ…… それは、おれが直接小野さんに言います。藤谷さんから言うと事務所からの苦言になっちゃうし……」
「それでいいのか? 妙に抉れたり小野さんの態度がはっきりしなかったら、もやもやしたまんまでこのあとレコーディングすることになるぞ?」
「向こうがやめるって言わない限り、おれは最後までやり抜きます」
「できるの?」
「やります…… やらせてください」
零はきっぱりと答えた。
「なんか…… きっちり決着つけないといけないような気がするんです」
「だといいけどねえ……」
藤谷は溜息をついた。
「んで、零は美也ちゃんのことどうすんの? 彼女、零がいない間ひとりになるぞ? 大丈夫か?」
「それは……」
「あの……」
口ごもった零を見て、今まで無言でやりとりを聞いていた泉が口を挟んだ。
「もしよかったら、美也さんお借りできないかな」
「え?」
藤谷と同時に泉を見た。
「あ、美也さんが嫌だったら無理にとは……。わたし、お料理教室やってるの。美也さんならアシスタントしてもらえるかなって…… ちょっと思って。最近生徒さん増えて、手が足らなくて。美也さんならカフェの経験もあるし……」
泉はそう言って
「出過ぎたことだったらごめんなさい」
と、照れくさそうに笑った。
「ちゃんとお仕事としてお支払いもしますから……」
「ありがとうございます」
零は頭を下げた。
「なんか、藤谷さんのところに世話になりっぱなしだ……」
「そう思ってくれるんなら、とりあえず仕事やりきろうな」
「はい」
藤谷の言葉に零はうなずいた。