次のレコーディングは1週間後になり、零と藤田にはスタジオをあとにした。
「梶谷さんに一日トレーニング追加でお願いしてもらえませんか?」
零が言うと藤谷はうんうん、と無言でうなずいた。
「どうしたんですか?」
零の訝し気な視線に藤谷はちょっとひきつった笑みを浮かべた。
「いや、なんかホラー映画見たのと似たような気持ちで」
「ホラー映画?」
「怖かったんだよ、『スカボローフェア』が。休憩前とあとだと全然違うんだもん。小野さんとなんか話をしたの?」
「話というほどでも……」
零は藤谷と並んで歩きながら足元に視線を落とした。
「小野さんは…… 歌の世界にどっぷり浸かるみたいです」
「まあ、そうだろうとは思うけど…… 零も同じような感じだよ?」
「全然…… 違いますよ」
零は苦笑して藤谷を見た。
「小野さんは自分が世界に浸かるんじゃない。例えれば…… 役者みたいなものなのかな…… 別人になりきってしまう」
「零もそうじゃなかったのか?」
藤谷はまだよくわからないらしい。零は自嘲気味に笑みを浮かべた。
「悔しいけど…… おれ、まだまだだ…… よくこれまで歌ってこれたなって思う」
「そうかなあ…… ぼくからしたら零は全然小野さんには負けてないと思うけど…‥」
「18歳ですごい曲作ってすごい声出して、彼女、何にとり憑かれたんだろ……」
「とり憑く?」
「いや、単に今そう思っただけ。あの…… できればレコーディング期間中、他のスケジュールをあまり入れずにその分梶谷さんのトレーニング受けることってできますか?」
藤谷は束の間零をじっと見つめたあと、うなずいた。
「うん。二週間後くらいからなら可能だと思う」
「すみません。お願いします」
藤谷は零の横顔に何か思い詰めたような部分があるのが気になった。
なんなんだろう、この違和感。レコーディングに入る前の零とはちょっと違う。
でも、それが具体的に何かはわからなかった。
「梶谷さんに一日トレーニング追加でお願いしてもらえませんか?」
零が言うと藤谷はうんうん、と無言でうなずいた。
「どうしたんですか?」
零の訝し気な視線に藤谷はちょっとひきつった笑みを浮かべた。
「いや、なんかホラー映画見たのと似たような気持ちで」
「ホラー映画?」
「怖かったんだよ、『スカボローフェア』が。休憩前とあとだと全然違うんだもん。小野さんとなんか話をしたの?」
「話というほどでも……」
零は藤谷と並んで歩きながら足元に視線を落とした。
「小野さんは…… 歌の世界にどっぷり浸かるみたいです」
「まあ、そうだろうとは思うけど…… 零も同じような感じだよ?」
「全然…… 違いますよ」
零は苦笑して藤谷を見た。
「小野さんは自分が世界に浸かるんじゃない。例えれば…… 役者みたいなものなのかな…… 別人になりきってしまう」
「零もそうじゃなかったのか?」
藤谷はまだよくわからないらしい。零は自嘲気味に笑みを浮かべた。
「悔しいけど…… おれ、まだまだだ…… よくこれまで歌ってこれたなって思う」
「そうかなあ…… ぼくからしたら零は全然小野さんには負けてないと思うけど…‥」
「18歳ですごい曲作ってすごい声出して、彼女、何にとり憑かれたんだろ……」
「とり憑く?」
「いや、単に今そう思っただけ。あの…… できればレコーディング期間中、他のスケジュールをあまり入れずにその分梶谷さんのトレーニング受けることってできますか?」
藤谷は束の間零をじっと見つめたあと、うなずいた。
「うん。二週間後くらいからなら可能だと思う」
「すみません。お願いします」
藤谷は零の横顔に何か思い詰めたような部分があるのが気になった。
なんなんだろう、この違和感。レコーディングに入る前の零とはちょっと違う。
でも、それが具体的に何かはわからなかった。