きっと父さんが用意したんだろう。こんな時まで勉強、勉強。
もう嫌になる、何もかもが。父さんのことなんて思い出したくない。
「では私はこれで失礼します。何かありましたらナースコールを押してください」
「分かりました。ありがとうございました」
看護師さんが出ていくと僕はテキストを手に取った。
数学、歴史。二教科だがとても終わらないと思うほどの厚さ。
見ていくと一番下にメモが置いてあった。これも父さんの直筆だった。
[燈空。これは今週の日曜日までに終わらすように。これが終わったら別のを渡す。毎週提出するように]
今週の日曜日....今日は水曜日だから今日も合わせて五日しかない。
こんな短期間でこの量をやらせるのは頭がおかしいと思う。
普通の夏休み課題よりも多い。しかも入院している人を相手に.....
やっぱり父さんは僕をいじめたいんだろう。優燈だったら同じことをしたのだろうか。
同じことをさせたとしても、僕は跡継ぎでもないし将来の事も自由に決めさせてくれない。
そんな家庭どこにもいないだろう。
普通の家に生まれたかった。不自由なく生きるのも大切かもしれない。
でも、愛情を持って育ててもらいたかった。双子だからどっちかが上になるのは当たり前。
だからどっちかを褒めるのではなく両方とも見てほしかった。優燈だけじゃなく、僕も....
そんな幼少期時代を過ごしてきたから、父さんのことも母さんのことも嫌い。
優燈のことだって....一番近くにいて、一番のライバルであったからこそ抜かされて悔しかった。
いつかは父さんも母さんも僕のこと見てくれると思って勉強もやった。でも優燈には勝てなかった。
優燈も頑張っていることは僕も知っている。でも、勝てない事の悔しさが大きかった。
そしていつの間にか諦めるようになった。何したって上手くいかいのだから.....
『努力は実る』とか言うけど、僕には当てはまらなかった。
あと五日の間でこのテキストも終わらせないといけない。時間を無駄には出来ない。
早く終わらせればドラマの続きが見れる。入院してドラマの面白さに気がついた。
だから早く終わらせたい。一分でも一秒でも早く終わらせる。
今日は気分的に歴史の気分だから歴史から終わらせる事にする。
一応勉強をやって来ているから問題をスラスラ解くことができる。集中すれば一時間で八分の一は終わると思う。
どんどん続けていって、気づいたら四時間経っていた。
この段階で半分いかないくらいを終わらせることができた。でももうそろそろで集中力が切れそうだから休憩するか。