***
翌朝。目を覚ましたらテレビのある机の上に一通の手紙が置いてあった。宛先は書いていなかった。
「えっ!?」声が出るほど驚いた。中を開けて見てみると相手は父さんだったから。
[事故で入院したって聞きました。入院生活が続くと思うが、スマホの使用は変わりません。テレビも同じです。定期的に勉強道具も送ります。それを全部期限の間にやるように]
父さんから手紙を貰うのは人生で初めてだ。僕なんかに興味がない父さんは、家でも話しかけてもらえさらなかった。
だから手紙が来るなんて思ってもいなかった。
でも、入院している時も勉強勉強。イライラしてくる。
なんで僕はこんなに父さんに支配されないといけないのかが分からない。親だからと言って僕は父さんの所有物じゃない。
──コンコン
「失礼します。本日一般病棟に移られますがいつになさいますか?」
「いつでも大丈夫です」
一般病棟。そこにはどんな人がいるんだろう。
でも、僕には何にも関係がない。僕の人生に関わることがない。
「でしたら一時間後でよろしいですか?」
「はい、お願いします」
「では失礼します」そう言って看護師さんは病室から出ていった。
一時間後....今から何しよう。足も骨折しているから病院内をどっか行くこともできない。
かと言ってずっとベットにいるのも嫌だ。
テレビでも見るか....父さんにあぁ言われたけどバレないし、昨日のドラマの続きが気になる。
一時間ならちょうど終わるし、家だと見れない。こんな貴重な時間を使わないわけがない。
僕はそれから昨日の続きのドラマを見た。やっぱり面白い。
人の演技というものが誰かの心に響くのが凄いと思う。
台詞を覚えて役を作って、大変なはずなのにこんなに役に入り込めるなんて.....凄い.....
一時間はあっという間に過ぎた。どんどん熱中していって、気づいたら終わっていた。
ちょうど看護師さんもくる時間だし、テレビも消しといた。父さんにバレたら怒られるから。
──コンコン
「失礼します。移動のお時間となりましたので」
「はい」
看護師さんが僕を車椅子に乗るのを手伝ってくれた。
荷物を持って、一般病棟へ移った。廊下を歩いている時いろいろな人とすれ違った。
老若男女いろんな人がいた。
骨折をしていて松葉杖をついている人もいれば、小さい子供がはしゃいでいたりもした。
いろいろな人がいてその人たちそれぞれに怪我だったり病気だったりを持っていて入院しているんだな.....
全員違うものを持っているのに話したり、遊んだりしていて.....
たまたま偶然出会って仲良くなって.....人間って凄いな.....
でも、僕には関係がない。僕は誰とも関わらないで生きていく.....誰の力も借りない.....
いつかどこかに行ってしまうなら最初からいないほうがいい。
辛い思いをしたくない....裏切られたくない....もう周りに人はいらない。
自分の人生だから自分で生きていくんだ.....
「小坂さんこちらが病室になります」
「ありがとうございます」
看護師さんがベットの方まで連れて行ってくれた。ベットの隣にある机にはテキストが置いてあった。