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「んっ.....」
目を開けると、見慣れない天井が見えた。
自分の腕には点滴が差してあって、すぐにここがどこかわかった。ここは病院だ。
看護師さんを呼ぼうと思ったけど、足が動かない。
布団をめくって見てみると、ギブスがしてあった。きっと骨折でもしたんだろう。
腕にも包帯が巻いてある。きっと、事故にあった時の怪我。仕方がないから、ナースコールを押すことにした。
『はい、どうされましたか?』
「あの....小坂燈空なんですけども目が覚めました」
『わかりました。今すぐ先生に連絡を入れますので、少々お待ちください』
数分後、先生と看護師さんが入ってきた。
先生の話によると、事故の衝撃で右足が骨折、右手は打撲だという。全治四ヶ月で、入院をすることになった。
それから、今は個人病室だけど、明日から一般病棟に移動することになった。
「では、また明日」
「ありがとうございました」
先生と看護師さんが病室から出ていく。きっと家にも連絡入れていないんだろうな。
もしくは、入れたけど来ないとか....でも、会いたくないからちょうどいい。
明日から、6人病棟になるらしいけど、今この部屋は僕しかいない。
何をしたって誰にも迷惑をかけない。だけど今まで何もしてこなかった僕は何をすることもできない。
テレビも数えるくらいしかみたことがなかった。ほぼ初めてテレビをつけた。
いつぶりか分からないくらい久しぶりに見たテレビはなかなか面白かった。
そして、僕は今日人生で初めてドラマを見た。初めて見たから集中してドラマに見入ってしまった。
家ではテレビさえ見させてくれない家庭だった。
だからこんなに面白いもの初めて見た。人の演技の凄さを知った。
この人たちも普通に過ごしている中で、色々な役を演じることが出来ているのだと思うと余計に熱中してしまう。
家ではスマホも三十分しか触らさせてくれない。勉強しかやらさせてくれなかったから、スマホをこんなに長く触ったことも初めてだった。
僕と優燈は勉強量も違ったし、スマホ使用時間も違った。勉強ができる優燈は僕の2倍の時間使わせてもらえてた。
だから入院して、親がいない場所で初めて普通の高校生としての生活をした。テレビを見てスマホを触って。
父さんと母さんに支配されないで、こんなに自由にできるなんてと思うと嬉しかった。
でも、スマホは制限がかけられているから三十分しか使えれなかった。だからずっとテレビを見ていた。
テレビを見て寝落ちをした。勉強以外の寝落ちなんて初めてだった。