「と...とうあ....燈空!!」

「っ!」


希心のでかい声によって僕は我に帰った。


「燈空。本当にどうした?大丈夫?」

「大丈夫。何?」


さっきからやたら僕のことを気にかけてくる希心だったけど、こんなに起こされたのなら何かがあったのではないか.....


「いや、あの人に燈空を呼んでほしいって言われたから......」


希心が振り向いた先に目をやる。


「っ!!」


病室の入り口に立っている一人の男性。


その人物は.....



「と......父さん.....」



僕の実の父であり、顔も見たくないくらい大っ嫌いな父だった。


「なんで....父さんが.....ここに.....」


最後にあったのがいつか覚えてないくらい久しぶりの父さん。

まず、なんで父さんがここにいるのかが不思議で仕方がなかった。


「えっ!?この人燈空のお父さんなの?」


僕の耳元で希心が聞いてきたけど、僕にはほとんど聞こえていなかった。


父さんが病室の中に入ってきて僕の方へと近づいてくる。


僕の頭の中はもう意味がわからない状態となっている。

目の前にいるのは本当に父さんなのか?

なんで父さんがこんなところにいるの....


「こちらの女性は?」


父さんが僕の目の前にきて一番最初に発した言葉はそれだった。

希心は「私のこと?」という感じで僕の方を見てきた。


「うん」と希心の方を見て小さく頷いた。


「は....初めまして....えっと、16歳の高橋希心と言います。えっと、ふ.....不束者(ふつつかもの)ではございますが、よろしくお願いします」


深々とお辞儀をしている希心だったが、不束者ってこんな時に使う言葉じゃないよね?


それに....父さんに向かってこんなことをして大丈夫なのか...

この後父さんの反応が怖くて怖くて仕方がなかった。