扉が開いた先には圧巻の絶景が広がっていた。


「........」


驚いて言葉も出ないくらいの絶景が広がっている。


『キーンコーンカーンコーン』

ちょうど17時のチャイムが町中に響かせている。



夕方の5時。ちょうど夕日が沈みかけていて、薄いオレンジ色の空が僕たちが毎日過ごしている街を照らしている。


「えっ....何、この絶景.....」

 
彼女に問いかけるように僕は口を開いた。

彼女の方を見るとニコニコしながら僕の座っている車椅子を押した。


エレベーターの中だったと言うことを忘れていた。

屋上の真ん中までくると車椅子を停めて、彼女はベンチに座った。


「いいでしょ!ここの景色」

「うん、びっくりした」


沈黙の時間が続くけどそんなことを気にしないくらい景色が綺麗だった。

ちょうど冷たい風が僕たちを包み込むように吹いた。


「まだちょっと肌寒いけど寒いけど、私ここの景色が好きなんだ〜!嫌なこととかあっても、ここにくればそんなことも忘れるくらい優しくて穏やかな気持ちになるの」

「ちょっとわかるかもしれない」


フェンス越しだけど、わかる。世界はこんなにも広い。

僕は毎日肩身の狭くて、空気の悪いあの家で閉じ込めらているかのように過ごしてきた。


だけど、実際はこんなにも広くて空気が美味しい。

こんなにも美しい街並みが並んでいる中で、僕は生まれてから過ごしてきていたんだ。


「ここはね、本当は入っちゃいけないところなんだよ」

「えっ!?」


まさかのことを言った彼女は「へへ」と少し笑いながら言った。


「私さ、ずっとここの病院で入院しているの。だからね宮瀬さんが特別に教えてくれたの。息抜きにここに来ていいよって」


宮瀬さんと言うのは僕たちの病室を担当してくれている看護師さん。

彼女はベンチがか立ち上がってフェンスに寄りかかった。


「でね、宮瀬さんが言ってくれたの。本当に大事な友達ができたらその人だけはここに連れて来てもいいよって」

「えっ!?」