ボソッとつぶやいた僕の声は彼女には聞こえてなかったらしい。


「でも、やらなかったらどうなるかわからないんだ。だからちょっと集中させてくれないかな。早く終わらせたいから.....」

「わかった。終わったら声かけて!いい場所に連れて行ってあげるから!」


にっこと笑うと彼女はパイプ椅子を元あった場所に片付けてから自分のベットに戻った。


「じゃあ、がんばってね」


──シャー


その一言を言うとカーテンを閉めた。一人っきりの空間になったけど、6人部屋だからカーテンの外から話し声ももちろん聞こえてくる。

今までは広い自分の部屋で自分の使っているシャーペンだけしか音が聞こえない静かな空間で、一人で勉強をしていた。


慣れたと言えば慣れた。だけど寂しさをたまに感じたりもした。


だけど、こんなことを考えている時間も勿体無い。1秒でも早くこのテキストを終わらせたい。

さっき彼女がいた時に開いたテキストにもう一回手を伸ばして続きのところから開いた。


そしてバックの中から小さい筆箱を取って机の上に置いた。

シャーペンをとってこの間やった続きから問題をスラスラと解き始めた。


父さんたちはいつも答えを渡さない。答えに頼ると言う事をさせないためだと言う。


だから生まれてから答えと言うものに触れたことがない。


学校から貰ってきても必ず渡さないといけない。渡さなかったら勉強の量を増やしたり、自由時間を無くされたりする。


それが嫌すぎて僕たちはずっと答えを渡してきた。『父さんの言うことは絶対』そう言われて育ってきた。

父さんは僕が持っていていいものを決めていた。だからSNSというのもやったことがない。


父さんが禁じていたから。こんな時でも父さん父さん。結局僕は父さんのことが頭から離れない。

それほど僕は父さんに怯えているのだろうか。

 
父さんと離れてみて初めて感じる。やっぱり僕は父さんのことが嫌い。

僕の人生を全て台無しにされた。世間ではいわゆる『青春』と言うものを奪われた。


早く父さんから逃げ出したい。あの息が詰まる家から出て行きたい。

優燈とも顔を合わせれない。僕が一方的に避けているだけだと思うけど。


優燈ときちんと話したことがない。だから優燈が父さんのことをどう思っているのかわからない。

もしかしたら僕と同じような気持ちなのかもしれない。生きずらいかもしれない。


でも、優燈は父さんと母さんから可愛がられてきていた。

何不自由なく過ごしてきている。


だから、僕と同じようで違う。双子だけど今までの人生の歩み方が違う。
 
双子なのにどうしてここまで差別をされてきたのだろうか。


もう....わからないよ.....