「ここがゴール地点さね」
今日・明日と一般公開されている王城の中庭で、アリソン神を象った巨大な石像を見上げる。
晴天の昼下がり、中庭には明日の出場者や関係者なのか、はたまた単なる観光客なのか、多数の人たちでごった返していた。
さすがは王都――ツノ持ち魔族が多く、エルフ族、ドワーフ族、獣族も多い。
それにしても、孤児院兼教会の礼拝堂で見上げるたびに思っていたのだけれど、
「お師匠様とアリソン神様ってなんか似てません?」
「ん?」
隣に立つお師匠様が体をくねらせて何やらセクシーなポーズを取る。
「あははっ、そりゃあ儂は絶世の美女だからねぇ!」
「じ、自分で言うんですか……まぁ実際そうですが」
「なんの! 負けられませんわ!」
隣ではノティアもセクシーなポーズ。
さらにその隣では、己を捨てきれないらしいシャーロッテが、引きつり笑いをしている。
「しっかし……」
ポーズを止めたお師匠様がやおらため息をついて、
「いくらお祭りだからって王城を一般開放するなんて、脳みそお花畑かい」
「ちょちょちょお師匠様!」
僕は慌ててお師匠様の口をふさぐ。
「こら、淑女の唇に触るんじゃあないよ」
が、僕の手はあっさりと引っぺがされる。
お師匠様は僕より腕力あるから。
「だってお師匠様がとんでもないこと言うから!」
「事実さね」
「事実だからって、言っていいことと悪いことがあるでしょう! 僕は不敬罪で処刑なんてされたくないですからね!?」
「うるさい弟子だねぇまったく。ほら、ここに仕込んでおきな」
「あ、はいそうでした――【無制限収納空間】!!」
■ ◆ ■ ◆
そうしてその日は高級宿の料理に舌鼓を打ち――
翌日の昼下がり、ついに大会の開催とあいなった。
■ ◆ ■ ◆
「ようこそお集まり下さいました!! 司会は四天王がひとり、わたくしリヴィエラ・ド・ラ・レヴィアタンが勤めさせていただきまぁっす!!」
王都の城門前、レースのスタート地点上空に浮遊するツノ持ち魔族の女性――四天王を名乗る方が、【拡声】の魔法で選手や観客に声を届ける。
四天王と言えば、魔王国において魔王様の次に強い4人の魔法使い!
そんな四天王が直々に司会をするとは!
「野郎どもぉッ!! アリソン様が残した、海神蛇の魔石が欲しいかぁッ!?」
「「「「「うぉぉぉおおおおおッ!!」」」」」
スタート地点に集まる選手たち――老若男女様々な人たちの鬨の声が大地を震わせる。
箒に跨っている人、二輪車のような魔道具に乗っている人、自身の【飛翔】のみで挑もうとしている人――様々だ。
やっぱり魔力に自信アリの人たちが多いのか、魔力が【闘気】となって大気を震わせる……怖い。
『こら、ビビるんじゃあないよ!』
「ふぁ!?」
いきなり、お師匠様の声がした。
『城壁の上さね』
見れば城壁の上の観客席から、お師匠様とシャーロッテ、ノティアが手を振っている。
いまのはお師匠様の【念話】か……びっくりした。
『お前さんはただ、落ち着いて、儂が教えた通りにやればいい』
『はい!』
「アリソン様が直々に残した魔力に触れたいかぁッ!?」
「「「「「うぉぉぉおおおおおッ!!」」」」」
「魔王様から直接、魔石を手渡されたいかぁッ!?」
「「「「「うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおッ!!」」」」」
選手たちの声がひときわ高まる。
僕ら魔族というのは、すべからく魔王様に【従魔】されている。
だからなのか、みんな――僕も含めて――魔王様のことが大好きなんだよね。
「それでは最後に、改めてルールのおさらいだぁ!」
もちろん僕は選手登録のときにルールを教えてもらったし、観客たちが手にしているパンフレットにもそれは記載されているけれど、まぁお約束か何かなんだろう。
「ルールは3つ!
ひとぉつ! 誰よりも速くゴール――王城中央広場の魔法神アリソン像にタッチすること!
ふたぁつ! 【瞬間移動】を使わないこと! もとよりコース上には【瞬間移動】の発動を阻害する結界が張られておりますので悪しからず!
みぃっつ! 他選手への妨害をしないこと!
それでは、よ~い……」
司会者さんがマジックバッグから取り出した旗を大きく振りかぶり、
「スタートぉッ!!」
振り下ろした!
選手たちが一斉に空に舞い上がり、王城目がけて飛んでいく!
そして僕はと言えば、
「お~っとぉ!? まだ飛び上がってすらいないノロマな選手がひとり!」
司会の声。
……そう、僕のことだ。
僕はお師匠様から授けられた『奥の手』を実行する為、意識を集中し、丹田から引きずり出した魔力を、目の前に展開する。
「【無制限収納空間】!」
目の前に発生するのは、暗く深い空間――僕の【収納空間】への入口。
「えいっ!」
僕はその中に飛び込む!
■ ◆ ■ ◆
「――――――――はっ!?」
気がつくと、目の前に魔法神アリソン様の石像!
「タッチ!」
僕は石像の足に触れる。
「え? え? え? はぁッ!?」
石像の隣でぼーっとしていた審判さんが慌てて僕と、僕の手を見て、
「ご、ゴォ~~~~ルッ!?!?」
かくして僕は一位になった。
今日・明日と一般公開されている王城の中庭で、アリソン神を象った巨大な石像を見上げる。
晴天の昼下がり、中庭には明日の出場者や関係者なのか、はたまた単なる観光客なのか、多数の人たちでごった返していた。
さすがは王都――ツノ持ち魔族が多く、エルフ族、ドワーフ族、獣族も多い。
それにしても、孤児院兼教会の礼拝堂で見上げるたびに思っていたのだけれど、
「お師匠様とアリソン神様ってなんか似てません?」
「ん?」
隣に立つお師匠様が体をくねらせて何やらセクシーなポーズを取る。
「あははっ、そりゃあ儂は絶世の美女だからねぇ!」
「じ、自分で言うんですか……まぁ実際そうですが」
「なんの! 負けられませんわ!」
隣ではノティアもセクシーなポーズ。
さらにその隣では、己を捨てきれないらしいシャーロッテが、引きつり笑いをしている。
「しっかし……」
ポーズを止めたお師匠様がやおらため息をついて、
「いくらお祭りだからって王城を一般開放するなんて、脳みそお花畑かい」
「ちょちょちょお師匠様!」
僕は慌ててお師匠様の口をふさぐ。
「こら、淑女の唇に触るんじゃあないよ」
が、僕の手はあっさりと引っぺがされる。
お師匠様は僕より腕力あるから。
「だってお師匠様がとんでもないこと言うから!」
「事実さね」
「事実だからって、言っていいことと悪いことがあるでしょう! 僕は不敬罪で処刑なんてされたくないですからね!?」
「うるさい弟子だねぇまったく。ほら、ここに仕込んでおきな」
「あ、はいそうでした――【無制限収納空間】!!」
■ ◆ ■ ◆
そうしてその日は高級宿の料理に舌鼓を打ち――
翌日の昼下がり、ついに大会の開催とあいなった。
■ ◆ ■ ◆
「ようこそお集まり下さいました!! 司会は四天王がひとり、わたくしリヴィエラ・ド・ラ・レヴィアタンが勤めさせていただきまぁっす!!」
王都の城門前、レースのスタート地点上空に浮遊するツノ持ち魔族の女性――四天王を名乗る方が、【拡声】の魔法で選手や観客に声を届ける。
四天王と言えば、魔王国において魔王様の次に強い4人の魔法使い!
そんな四天王が直々に司会をするとは!
「野郎どもぉッ!! アリソン様が残した、海神蛇の魔石が欲しいかぁッ!?」
「「「「「うぉぉぉおおおおおッ!!」」」」」
スタート地点に集まる選手たち――老若男女様々な人たちの鬨の声が大地を震わせる。
箒に跨っている人、二輪車のような魔道具に乗っている人、自身の【飛翔】のみで挑もうとしている人――様々だ。
やっぱり魔力に自信アリの人たちが多いのか、魔力が【闘気】となって大気を震わせる……怖い。
『こら、ビビるんじゃあないよ!』
「ふぁ!?」
いきなり、お師匠様の声がした。
『城壁の上さね』
見れば城壁の上の観客席から、お師匠様とシャーロッテ、ノティアが手を振っている。
いまのはお師匠様の【念話】か……びっくりした。
『お前さんはただ、落ち着いて、儂が教えた通りにやればいい』
『はい!』
「アリソン様が直々に残した魔力に触れたいかぁッ!?」
「「「「「うぉぉぉおおおおおッ!!」」」」」
「魔王様から直接、魔石を手渡されたいかぁッ!?」
「「「「「うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおッ!!」」」」」
選手たちの声がひときわ高まる。
僕ら魔族というのは、すべからく魔王様に【従魔】されている。
だからなのか、みんな――僕も含めて――魔王様のことが大好きなんだよね。
「それでは最後に、改めてルールのおさらいだぁ!」
もちろん僕は選手登録のときにルールを教えてもらったし、観客たちが手にしているパンフレットにもそれは記載されているけれど、まぁお約束か何かなんだろう。
「ルールは3つ!
ひとぉつ! 誰よりも速くゴール――王城中央広場の魔法神アリソン像にタッチすること!
ふたぁつ! 【瞬間移動】を使わないこと! もとよりコース上には【瞬間移動】の発動を阻害する結界が張られておりますので悪しからず!
みぃっつ! 他選手への妨害をしないこと!
それでは、よ~い……」
司会者さんがマジックバッグから取り出した旗を大きく振りかぶり、
「スタートぉッ!!」
振り下ろした!
選手たちが一斉に空に舞い上がり、王城目がけて飛んでいく!
そして僕はと言えば、
「お~っとぉ!? まだ飛び上がってすらいないノロマな選手がひとり!」
司会の声。
……そう、僕のことだ。
僕はお師匠様から授けられた『奥の手』を実行する為、意識を集中し、丹田から引きずり出した魔力を、目の前に展開する。
「【無制限収納空間】!」
目の前に発生するのは、暗く深い空間――僕の【収納空間】への入口。
「えいっ!」
僕はその中に飛び込む!
■ ◆ ■ ◆
「――――――――はっ!?」
気がつくと、目の前に魔法神アリソン様の石像!
「タッチ!」
僕は石像の足に触れる。
「え? え? え? はぁッ!?」
石像の隣でぼーっとしていた審判さんが慌てて僕と、僕の手を見て、
「ご、ゴォ~~~~ルッ!?!?」
かくして僕は一位になった。