カランカランカラン……
懐かしの、城塞都市の冒険者ギルドホールに入る。
中でたむろしている冒険者たちの視線が僕とお師匠様とノティアに一斉に集まって、
「ヒッ……」
思わず小さな悲鳴を上げる僕と、
「「「「「ヒッ……」」」」」
同じく悲鳴を上げる冒険者たち。
「く、首狩り族だ……」
「オークの集団を集落ごと【収納】したって聞いたぜ……」
「西の森の『街』を、たった一日で城壁で囲んじまったそうじゃねぇか……しかも鉄の壁で!」
「鉄ぅ!? 鉄生成っつったらお前、聖級土魔法……」
僕を見てヒソヒソと話してる。
……いやぁ、僕もすっかり恐怖の対象になっちゃったなぁ。
「壁神様、ありがたやありがたや~」
そして、僕を拝んでいる層も一定数。
あれかな、商人やりつつ冒険者もやってる人たちだろうか。
「く、クリス様! 本日はどのようなご用件で!?」
受付の列に並ぼうとすると、奥からギルド職員が飛び出してきた。
「あ、えっと……警備員増強の為に依頼を出したくって」
「ただちに手配させて頂きます! ささ、こちらへ――」
順番抜かしみたいで気が引けるんだけど……。
「ほら、さっさと歩く! お前さんがいたら、みんながびびっちまって仕事にならないんだろうさ」
見れば、僕の前に並んでいた若気冒険者が、青い顔して震えながら、
「じゅ、順番譲りますから……どうか首は狩らないで!」
「か、狩らないよ!」
「ひぃっ」
■ ◆ ■ ◆
「クリス! お前さん、これに出な!」
依頼発行の手続きを終えると、その間ずっと掲示板を眺めていたお師匠様が声をかけてきた。
「なんです?」
掲示板に張られている紙を見てみると、
「第23回、王都飛翔レースぅ?」
1週間後に開催される、魔法を使った競走大会の参加者募集の案内だった。
「いやいやお師匠様、僕、飛翔魔法なんて使えないんですけど。っていうか何が目的なんです?」
「これさね」
「なになに……優勝賞品、先王アリソンの……秘宝たる……海神蛇の魔石! アリソン様直々の魔力充填済の品!?」
「すごいだろう?」
魔石とは、魔物の丹田に位置するところに存在する石のこと。
魔物の魔力が込められていて、それを魔道具の原動力に使ったり、魔力の減った魔法使いが【吸魔】で吸って魔力を回復させるのに使ったりする。
魔力が空になった魔石へは、【魔力譲渡】で再び魔力を充填することもできる。
伝説の魔獣たる海神蛇の魔石ともなれば、さぞかし大きく、高品質なのだろう……それも、アリソン様ご自身の魔力が充填されてるなんて!?
「す、すごいですね……いやでも、こんなの仮に手に入れられたとして、何に使うんです?」
「お前さんに持たせるのさ」
「僕に持たせてどうするんですか?」
「そりゃ、魔力が枯渇したときの保険さね」
「お師匠様がいるじゃないですか。いつもみたく【魔力譲渡】してくれれば」
「はぁ~……儂ゃお前さんの母ちゃんじゃないんだよ? 四六時中儂が一緒に居るとは限らないだろうに」
「――――……」
――それは、そうだ。
お師匠様は僕のお師匠様だけれど、別に僕の親でも保護者でもないし、僕に良くしてくれるのは、あくまで僕の【無制限収納空間】を使って、お師匠様の目的――その目的が何なのかは未だに教えてもらえていないけれど――を達成する為だ。
それはつまり、お師匠様が目的を達成した後は、僕の前から姿を消してしまうという可能性があるわけで。
……うぅ、急に心細くなってきた。
「……で、でも、急にいなくなったりしないでくださいね?」
「ったく、捨てられた子猫じゃあるまいし……男ならしゃきっとしな、しゃきっと!」
「は、はいぃ……あれ? でも僕、【吸魔】使えません。いくら魔力充填済の魔石があっても、魔力吸えないんじゃ意味がないのでは……」
「そこはまぁ、ノティアやシャーロッテにやらせりゃいいだろうさ。魔石から【吸魔】で魔力を吸って、【魔力譲渡】でお前さんに充填するというわけさね」
「な、なるほど……」
ということはつまり、シャーロッテかノティアのどちらかは最低限、僕のそばに居なきゃならないわけだ。
なんか昨日のお風呂事件からこっち、シャーロッテとノティアの僕に対する距離感が、妙に近いんだよね……いや、妙でも何でもないか。何しろふたりの、は、は、は、裸……を、見ちゃったわけだし。
「うふふ……」
ノティアが怪しく笑いながら、腕を絡めてくる。
「ちょちょちょっ、ノティア」
「ったく、このバカ弟子が……ほら、さっさと戻って特訓するよ」
「は、はい!」
ということで、冒険者ギルド経由で大会への参加を申し込み、ノティアの【瞬間移動】で『街』の郊外へと飛んだ。
懐かしの、城塞都市の冒険者ギルドホールに入る。
中でたむろしている冒険者たちの視線が僕とお師匠様とノティアに一斉に集まって、
「ヒッ……」
思わず小さな悲鳴を上げる僕と、
「「「「「ヒッ……」」」」」
同じく悲鳴を上げる冒険者たち。
「く、首狩り族だ……」
「オークの集団を集落ごと【収納】したって聞いたぜ……」
「西の森の『街』を、たった一日で城壁で囲んじまったそうじゃねぇか……しかも鉄の壁で!」
「鉄ぅ!? 鉄生成っつったらお前、聖級土魔法……」
僕を見てヒソヒソと話してる。
……いやぁ、僕もすっかり恐怖の対象になっちゃったなぁ。
「壁神様、ありがたやありがたや~」
そして、僕を拝んでいる層も一定数。
あれかな、商人やりつつ冒険者もやってる人たちだろうか。
「く、クリス様! 本日はどのようなご用件で!?」
受付の列に並ぼうとすると、奥からギルド職員が飛び出してきた。
「あ、えっと……警備員増強の為に依頼を出したくって」
「ただちに手配させて頂きます! ささ、こちらへ――」
順番抜かしみたいで気が引けるんだけど……。
「ほら、さっさと歩く! お前さんがいたら、みんながびびっちまって仕事にならないんだろうさ」
見れば、僕の前に並んでいた若気冒険者が、青い顔して震えながら、
「じゅ、順番譲りますから……どうか首は狩らないで!」
「か、狩らないよ!」
「ひぃっ」
■ ◆ ■ ◆
「クリス! お前さん、これに出な!」
依頼発行の手続きを終えると、その間ずっと掲示板を眺めていたお師匠様が声をかけてきた。
「なんです?」
掲示板に張られている紙を見てみると、
「第23回、王都飛翔レースぅ?」
1週間後に開催される、魔法を使った競走大会の参加者募集の案内だった。
「いやいやお師匠様、僕、飛翔魔法なんて使えないんですけど。っていうか何が目的なんです?」
「これさね」
「なになに……優勝賞品、先王アリソンの……秘宝たる……海神蛇の魔石! アリソン様直々の魔力充填済の品!?」
「すごいだろう?」
魔石とは、魔物の丹田に位置するところに存在する石のこと。
魔物の魔力が込められていて、それを魔道具の原動力に使ったり、魔力の減った魔法使いが【吸魔】で吸って魔力を回復させるのに使ったりする。
魔力が空になった魔石へは、【魔力譲渡】で再び魔力を充填することもできる。
伝説の魔獣たる海神蛇の魔石ともなれば、さぞかし大きく、高品質なのだろう……それも、アリソン様ご自身の魔力が充填されてるなんて!?
「す、すごいですね……いやでも、こんなの仮に手に入れられたとして、何に使うんです?」
「お前さんに持たせるのさ」
「僕に持たせてどうするんですか?」
「そりゃ、魔力が枯渇したときの保険さね」
「お師匠様がいるじゃないですか。いつもみたく【魔力譲渡】してくれれば」
「はぁ~……儂ゃお前さんの母ちゃんじゃないんだよ? 四六時中儂が一緒に居るとは限らないだろうに」
「――――……」
――それは、そうだ。
お師匠様は僕のお師匠様だけれど、別に僕の親でも保護者でもないし、僕に良くしてくれるのは、あくまで僕の【無制限収納空間】を使って、お師匠様の目的――その目的が何なのかは未だに教えてもらえていないけれど――を達成する為だ。
それはつまり、お師匠様が目的を達成した後は、僕の前から姿を消してしまうという可能性があるわけで。
……うぅ、急に心細くなってきた。
「……で、でも、急にいなくなったりしないでくださいね?」
「ったく、捨てられた子猫じゃあるまいし……男ならしゃきっとしな、しゃきっと!」
「は、はいぃ……あれ? でも僕、【吸魔】使えません。いくら魔力充填済の魔石があっても、魔力吸えないんじゃ意味がないのでは……」
「そこはまぁ、ノティアやシャーロッテにやらせりゃいいだろうさ。魔石から【吸魔】で魔力を吸って、【魔力譲渡】でお前さんに充填するというわけさね」
「な、なるほど……」
ということはつまり、シャーロッテかノティアのどちらかは最低限、僕のそばに居なきゃならないわけだ。
なんか昨日のお風呂事件からこっち、シャーロッテとノティアの僕に対する距離感が、妙に近いんだよね……いや、妙でも何でもないか。何しろふたりの、は、は、は、裸……を、見ちゃったわけだし。
「うふふ……」
ノティアが怪しく笑いながら、腕を絡めてくる。
「ちょちょちょっ、ノティア」
「ったく、このバカ弟子が……ほら、さっさと戻って特訓するよ」
「は、はい!」
ということで、冒険者ギルド経由で大会への参加を申し込み、ノティアの【瞬間移動】で『街』の郊外へと飛んだ。