「【目録】!」
お師匠様に指示され、【目録】を名前順に表示する。
「ドナ……ドナ……あった!」
『ドナの右腕の肉片』『ドナの右腕の肉片』『ドナの右腕の肉片』『ドナの右腕の肉片』『ドナの右腕の骨片』『ドナの右腕の骨片』『ドナの右腕の骨片』『ドナの右腕の髄液』……
「うへぇ……」
【目録】ウィンドウをのぞき込むドナが、嫌な声を出す。
「これらとお前さんを、クリスの【収納空間】の中で統合する。儂の【万物解析】によるサポートがあれば、可能だろうさ。が、ひとつ問題がある」
「「問題……?」」
僕とドナの声が重なる。
「ああ。ドナ、お前さん自身を一度、クリスの【収納空間】に【収納】しなきゃならないってことさね」
「「――――……」」
「この【目録】を見る限り、オーク・ジェネラルすら生きたままの【収納】に成功しているから、お前さんも死ぬ心配はないが――さて、どうするさね?」
「…………」
ドナは、うんうんうなりながら悩む。
そりゃそうだ。
僕の【収納空間】に【収納】されるってことは、一時的とはいえ僕に生殺与奪の権を握られるということだもの。
「俺、クリスさんを信じます!! お願いします!!」
けれど、ドナは決心したようだった。
「分かった」
僕はうなずく。
本心では僕自身が不安で堪らないのだけれど、他ならぬドナに不安な顔は見せられない。
「安心して――【無制限収納空間】!」
ドナの姿が消える。
難民の女の子が、不安そうな顔でこちらを見てくる……うぅ、僕までより一層不安になってしまうから、やめてほしい。
「【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎】――」
お師匠様は【万物解析】を発動寸前まで詠唱し、僕の【目録】ウィンドウに手をかざして、
「【大治癒】――【万物解析】。よし、【念話】」
お師匠様と僕の思考がつながる。
『治癒後のイメージを解析した。あとはお前さんが【目録】でドナの体と腕の破片を統合すれば元通りのはずだ』
『わ、分かりました……』
僕は【目録】ウィンドウで『ドナの右腕の肉片』のひとつに指で触れ、それをリストの中にある『生きているドナ』の文字に重ね合わせる。
――果たして、『生きているドナ』に吸収されるようにして、『ドナの右腕の肉片』の文字が消えた。
『おぉっ!? これって成功したってことですか!?』
女の子やエンゾたちを不安にさせない為に、【念話】で尋ねる。
『ああ、問題ないさね。その調子で全部つなげちまいな』
『はい!』
言われた通り、腕のかけらをドナ本体にどんどんと投入していく。
そうして腕のかけらがなくなって、
「よし――出しな」
「はい! 【収納空間】!!」
目の前に、ドナが現れた。
――右腕が存在する、ドナが!!
「……あれ? もう終わったんですか?」
ドナはきょとんとしている。
【収納空間】内は時間が止まっているからね。
そんなドナが、ふと自分の右腕を見て、
「って――うおおおっ!? う、腕が戻ってる!!」
「うん。動かしてみてもらえる?」
「は、はい――うぉぉ、動く! 動きます!!」
「はぁ、良かった――…」
気が抜けて、僕はその場に座り込んでしまった。
■ ◆ ■ ◆
女の子のご両親からは、泣いて感謝された。
すべてはドナのおかげだから、と言っておいた。
結果として腕が戻ったとはいえ、利き腕を失ってまであの子を守り切ったドナだもの……報われなきゃおかしいよね。
「それにしても、オークの集落まで随分と距離があるとは思わないかい?」
難民村の片づけを手伝いながら、お師匠様がそう言った。
「これだけ離れているってのに、難民村が出来て1日や2日で村の存在を知って、大挙して押し寄せるなんてさ」
「ど、どういうことですか……?」
「儂にも分からないが、注意しておくに越したことはないさね」
「わ、分かりました……冒険者ギルドマスターにも相談して、西の森方面の警備を強化してもらいますね」
「まぁ、それも重要なんだが、もっと手っ取り早い方法があるさね」
「というと?」
「壁さ。難民村や交易所、『街』をまるっと城壁で囲んでしまえばいい」
「んな、簡単に言ってくれますけど……」
「出来るさね、いまのお前さんなら」
「それって――」
「もちろん、【無制限収納空間】の力でさ」
「やっぱり……」
お師匠様に指示され、【目録】を名前順に表示する。
「ドナ……ドナ……あった!」
『ドナの右腕の肉片』『ドナの右腕の肉片』『ドナの右腕の肉片』『ドナの右腕の肉片』『ドナの右腕の骨片』『ドナの右腕の骨片』『ドナの右腕の骨片』『ドナの右腕の髄液』……
「うへぇ……」
【目録】ウィンドウをのぞき込むドナが、嫌な声を出す。
「これらとお前さんを、クリスの【収納空間】の中で統合する。儂の【万物解析】によるサポートがあれば、可能だろうさ。が、ひとつ問題がある」
「「問題……?」」
僕とドナの声が重なる。
「ああ。ドナ、お前さん自身を一度、クリスの【収納空間】に【収納】しなきゃならないってことさね」
「「――――……」」
「この【目録】を見る限り、オーク・ジェネラルすら生きたままの【収納】に成功しているから、お前さんも死ぬ心配はないが――さて、どうするさね?」
「…………」
ドナは、うんうんうなりながら悩む。
そりゃそうだ。
僕の【収納空間】に【収納】されるってことは、一時的とはいえ僕に生殺与奪の権を握られるということだもの。
「俺、クリスさんを信じます!! お願いします!!」
けれど、ドナは決心したようだった。
「分かった」
僕はうなずく。
本心では僕自身が不安で堪らないのだけれど、他ならぬドナに不安な顔は見せられない。
「安心して――【無制限収納空間】!」
ドナの姿が消える。
難民の女の子が、不安そうな顔でこちらを見てくる……うぅ、僕までより一層不安になってしまうから、やめてほしい。
「【赤き蛇・神の悪意サマエルが植えし葡萄の蔦・アダムの林檎】――」
お師匠様は【万物解析】を発動寸前まで詠唱し、僕の【目録】ウィンドウに手をかざして、
「【大治癒】――【万物解析】。よし、【念話】」
お師匠様と僕の思考がつながる。
『治癒後のイメージを解析した。あとはお前さんが【目録】でドナの体と腕の破片を統合すれば元通りのはずだ』
『わ、分かりました……』
僕は【目録】ウィンドウで『ドナの右腕の肉片』のひとつに指で触れ、それをリストの中にある『生きているドナ』の文字に重ね合わせる。
――果たして、『生きているドナ』に吸収されるようにして、『ドナの右腕の肉片』の文字が消えた。
『おぉっ!? これって成功したってことですか!?』
女の子やエンゾたちを不安にさせない為に、【念話】で尋ねる。
『ああ、問題ないさね。その調子で全部つなげちまいな』
『はい!』
言われた通り、腕のかけらをドナ本体にどんどんと投入していく。
そうして腕のかけらがなくなって、
「よし――出しな」
「はい! 【収納空間】!!」
目の前に、ドナが現れた。
――右腕が存在する、ドナが!!
「……あれ? もう終わったんですか?」
ドナはきょとんとしている。
【収納空間】内は時間が止まっているからね。
そんなドナが、ふと自分の右腕を見て、
「って――うおおおっ!? う、腕が戻ってる!!」
「うん。動かしてみてもらえる?」
「は、はい――うぉぉ、動く! 動きます!!」
「はぁ、良かった――…」
気が抜けて、僕はその場に座り込んでしまった。
■ ◆ ■ ◆
女の子のご両親からは、泣いて感謝された。
すべてはドナのおかげだから、と言っておいた。
結果として腕が戻ったとはいえ、利き腕を失ってまであの子を守り切ったドナだもの……報われなきゃおかしいよね。
「それにしても、オークの集落まで随分と距離があるとは思わないかい?」
難民村の片づけを手伝いながら、お師匠様がそう言った。
「これだけ離れているってのに、難民村が出来て1日や2日で村の存在を知って、大挙して押し寄せるなんてさ」
「ど、どういうことですか……?」
「儂にも分からないが、注意しておくに越したことはないさね」
「わ、分かりました……冒険者ギルドマスターにも相談して、西の森方面の警備を強化してもらいますね」
「まぁ、それも重要なんだが、もっと手っ取り早い方法があるさね」
「というと?」
「壁さ。難民村や交易所、『街』をまるっと城壁で囲んでしまえばいい」
「んな、簡単に言ってくれますけど……」
「出来るさね、いまのお前さんなら」
「それって――」
「もちろん、【無制限収納空間】の力でさ」
「やっぱり……」