「――――っ、はっ!?」
気がつけば、僕は仰向けに寝転がっていて、目の前には何か大きな――
「あきれた!」
お師匠様の声が上から降ってくる。
え? え? え? 僕、もしかしてお師匠様に膝枕されてる!?
ってことは、視界をふさぐこの大きなものは――
「本当に気絶するやつがいるか!」
お師匠様に額をぺしりと叩かれた。
「ほらほら、目ぇ覚めたんならさっさと起き上がる!」
「す、すみません!」
慌てて起き上がろうとして、お師匠様のバストに頭突きしてしまう。
「痛っ!」
…………固い。鎖帷子でも着込んでいるのだろうか。
「ったく失礼な子だねぇ……まぁでも、あらかじめお前さんの魔力を確認していなかった儂にも非はあるかね」
起き上がる。
ここは森の中――さっき僕が遠隔【収納】しようとした場所だ。
つまり、予想通り魔力切れで気絶してたってことか……。
「こりゃあ本腰入れて鍛えなきゃならなそうだねぇ。お前さん、悪いけど【ステータス】を見させてもらうよ?」
「は、はい!」
【ステータス・ウィンドウ】にはその人のあらゆる能力・スキル・称号が乗っている。
だから、よほど信頼のおける相手にしか見せないのが普通だ。
けど、このお師匠様は僕の命の恩人。
僕の経歴には後ろ暗いところもないし、問題ないだろう。
「――【ステータス・オープン】!」
目の前に表示された【ステータス・ウィンドウ】をお師匠様の目の前へと動かす。
*****************************************************
【名前】 クリス
【年齢】 16歳
【職業】 冒険者
【称号】 (なし)
【契約】 魔王ルキフェル13世の従魔
アリス・アインス・フォン・ロンダキアの弟子
【LV】 5
【HP】 172/172
【MP】 1/9
【力】 26
【魔法力】 1
【体力】 29
【精神力】 9
【素早さ】 35
【加護】
無制限収納空間LV1
【戦闘系スキル】
短剣術LV1 弓術LV1 盾術LV1 体術LV1
【魔法系スキル】
魔力感知LV1 魔力操作LV1 時空魔法LV1
【耐性系スキル】
威圧耐性LV1 苦痛耐性LV5
睡眠耐性LV3 空腹耐性LV5
【生活系スキル】
ルキフェル王国語LV3 算術LV3 野外生活LV3
料理LV3 野外料理LV3
*****************************************************
……弱い。我ながら、本当に弱い。
レベルは、並の冒険者なら15~20くらいはあるのが普通で、一流の冒険者や軍人だとレベル30越えもザラという世界。
レベルは各スキルを伸ばすことでも多少上がるけれど、やっぱり魔物を倒さないことにはほとんど上がらない。
……そしてホーンラビットすら倒せない僕は、未だに魔物の一体も倒したことがない。
スキルレベルは魔法の等級と対応している。
LV1、2が初級。
僕の戦闘系スキルは、まるで使い物にならないレベル。
LV3、4が中級。
僕の料理の腕前は、まぁ人並みというわけだ。
LV5、6が上級。
情けないことに、僕は苦痛と空腹には強い。
孤児院での生活はひもじいものだったし、特にこの1年は苦痛の連続だったから。
そんな僕だから空腹も耐えられるし、誰かから罵倒されたり蹴られも、大抵のことは我慢できる……自慢できることじゃあないけれど、ね。
LV7、8が聖級。
この域に達した人は、聖の称号を得られる。
例えば剣LV7に達した剣士は【剣聖】と呼ばれる。
LV9、10が神級。
このレベルのスキル持ちなんて、実在するのだろうか?
伝説では先王様がLV10スキル持ちだったらしいけれど、怪しいものだと思う。
「あの、お師匠様……?」
さっきからお師匠様が黙りこくっている。
さすがにステータスがひど過ぎて、弟子にするのは止めにしようと思ったのかな?
不安になって師匠の顔をのぞき込むと、
「……ぷっ、ぷっくくくくく……」
…………笑いをこらえていた。
「……お師匠様」
「あ~っはっはっはっ! こりゃひどい! 0歳児のときのマスターですら、ここまで弱くはなかったよ」
「誰ですかマスターって……」
『マスター』ってのが誰かは知らないけれど、0歳児より弱いってのはさすがに言い過ぎだと思う。
「いやいやそれにしたって、魔力が9!? 9しかないって本当かね! 毎日【無制限収納空間】を使ってりゃ、多少は上がるってなもんだろう? 魔力は、魔法を使えば使うほど伸びるものなんだから」
「いえ……僕はいくら【収納空間】を使っても、どれだけ大きなものを【収納】しても、魔力がまったく減らないんです」
「まったく?」
「まったく」
「1も?」
「1も」
「ははぁ~スキル適正が高過ぎるのか、【加護】ゆえの特性か。魔力をまったく消耗しないがゆえに魔力がまったく伸びず、けれどもいかなお前さんと言えども遠隔【収納】には10以上の魔力が必要で、それが為にいままで遠隔【収納】に成功したことがなかったと。そういうことかい?」
「はい……たぶん」
「あはははっ、不幸と言うか滑稽と言うか」
「滑稽だなんてひどい……」
「まぁ、分かったよ。見捨てたりしないから、安心おし」
お師匠様が微笑みかけてくる。
「大丈夫、儂にとっておきの策がある」
「あ、ありがとうございます……」
気恥ずかしくなって視線を上の方に逸らして、
「――――あっ」
太陽! 太陽が、空の頂点で輝いてる!
「お師匠様っ、いま何時か分かりますか!?」
「【時計】――正午を回ったところさ。残念だけど、今日の勝負は儂らの負けさね」
「す、すみません……」
「気にしなさんな。今日は負けでもいいのさ。今、日、は、ね」
気がつけば、僕は仰向けに寝転がっていて、目の前には何か大きな――
「あきれた!」
お師匠様の声が上から降ってくる。
え? え? え? 僕、もしかしてお師匠様に膝枕されてる!?
ってことは、視界をふさぐこの大きなものは――
「本当に気絶するやつがいるか!」
お師匠様に額をぺしりと叩かれた。
「ほらほら、目ぇ覚めたんならさっさと起き上がる!」
「す、すみません!」
慌てて起き上がろうとして、お師匠様のバストに頭突きしてしまう。
「痛っ!」
…………固い。鎖帷子でも着込んでいるのだろうか。
「ったく失礼な子だねぇ……まぁでも、あらかじめお前さんの魔力を確認していなかった儂にも非はあるかね」
起き上がる。
ここは森の中――さっき僕が遠隔【収納】しようとした場所だ。
つまり、予想通り魔力切れで気絶してたってことか……。
「こりゃあ本腰入れて鍛えなきゃならなそうだねぇ。お前さん、悪いけど【ステータス】を見させてもらうよ?」
「は、はい!」
【ステータス・ウィンドウ】にはその人のあらゆる能力・スキル・称号が乗っている。
だから、よほど信頼のおける相手にしか見せないのが普通だ。
けど、このお師匠様は僕の命の恩人。
僕の経歴には後ろ暗いところもないし、問題ないだろう。
「――【ステータス・オープン】!」
目の前に表示された【ステータス・ウィンドウ】をお師匠様の目の前へと動かす。
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【名前】 クリス
【年齢】 16歳
【職業】 冒険者
【称号】 (なし)
【契約】 魔王ルキフェル13世の従魔
アリス・アインス・フォン・ロンダキアの弟子
【LV】 5
【HP】 172/172
【MP】 1/9
【力】 26
【魔法力】 1
【体力】 29
【精神力】 9
【素早さ】 35
【加護】
無制限収納空間LV1
【戦闘系スキル】
短剣術LV1 弓術LV1 盾術LV1 体術LV1
【魔法系スキル】
魔力感知LV1 魔力操作LV1 時空魔法LV1
【耐性系スキル】
威圧耐性LV1 苦痛耐性LV5
睡眠耐性LV3 空腹耐性LV5
【生活系スキル】
ルキフェル王国語LV3 算術LV3 野外生活LV3
料理LV3 野外料理LV3
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……弱い。我ながら、本当に弱い。
レベルは、並の冒険者なら15~20くらいはあるのが普通で、一流の冒険者や軍人だとレベル30越えもザラという世界。
レベルは各スキルを伸ばすことでも多少上がるけれど、やっぱり魔物を倒さないことにはほとんど上がらない。
……そしてホーンラビットすら倒せない僕は、未だに魔物の一体も倒したことがない。
スキルレベルは魔法の等級と対応している。
LV1、2が初級。
僕の戦闘系スキルは、まるで使い物にならないレベル。
LV3、4が中級。
僕の料理の腕前は、まぁ人並みというわけだ。
LV5、6が上級。
情けないことに、僕は苦痛と空腹には強い。
孤児院での生活はひもじいものだったし、特にこの1年は苦痛の連続だったから。
そんな僕だから空腹も耐えられるし、誰かから罵倒されたり蹴られも、大抵のことは我慢できる……自慢できることじゃあないけれど、ね。
LV7、8が聖級。
この域に達した人は、聖の称号を得られる。
例えば剣LV7に達した剣士は【剣聖】と呼ばれる。
LV9、10が神級。
このレベルのスキル持ちなんて、実在するのだろうか?
伝説では先王様がLV10スキル持ちだったらしいけれど、怪しいものだと思う。
「あの、お師匠様……?」
さっきからお師匠様が黙りこくっている。
さすがにステータスがひど過ぎて、弟子にするのは止めにしようと思ったのかな?
不安になって師匠の顔をのぞき込むと、
「……ぷっ、ぷっくくくくく……」
…………笑いをこらえていた。
「……お師匠様」
「あ~っはっはっはっ! こりゃひどい! 0歳児のときのマスターですら、ここまで弱くはなかったよ」
「誰ですかマスターって……」
『マスター』ってのが誰かは知らないけれど、0歳児より弱いってのはさすがに言い過ぎだと思う。
「いやいやそれにしたって、魔力が9!? 9しかないって本当かね! 毎日【無制限収納空間】を使ってりゃ、多少は上がるってなもんだろう? 魔力は、魔法を使えば使うほど伸びるものなんだから」
「いえ……僕はいくら【収納空間】を使っても、どれだけ大きなものを【収納】しても、魔力がまったく減らないんです」
「まったく?」
「まったく」
「1も?」
「1も」
「ははぁ~スキル適正が高過ぎるのか、【加護】ゆえの特性か。魔力をまったく消耗しないがゆえに魔力がまったく伸びず、けれどもいかなお前さんと言えども遠隔【収納】には10以上の魔力が必要で、それが為にいままで遠隔【収納】に成功したことがなかったと。そういうことかい?」
「はい……たぶん」
「あはははっ、不幸と言うか滑稽と言うか」
「滑稽だなんてひどい……」
「まぁ、分かったよ。見捨てたりしないから、安心おし」
お師匠様が微笑みかけてくる。
「大丈夫、儂にとっておきの策がある」
「あ、ありがとうございます……」
気恥ずかしくなって視線を上の方に逸らして、
「――――あっ」
太陽! 太陽が、空の頂点で輝いてる!
「お師匠様っ、いま何時か分かりますか!?」
「【時計】――正午を回ったところさ。残念だけど、今日の勝負は儂らの負けさね」
「す、すみません……」
「気にしなさんな。今日は負けでもいいのさ。今、日、は、ね」