「なんだよ、楽勝じゃねぇか。これなら素手でも受け止めれるな!」
「はぁ!?」
傷ひとつついていない盾を背負ったAランク冒険者、『白牙』フェンリス氏の発現に、武器商さんが卒倒しそうな声を上げる。
「ってことで俺様の手を狙って撃ってくれ!」
言って的の方に向かうフェンリス氏に向かって、
「む、むむむ無理です! いくらこの銃でも、100メートルの距離では外す恐れがあります!」
「ん、そうなのか? んじゃあここで」
言って、銃口から数メートルの距離で仁王立ちするフェンリス氏。
やおら銃口に向かって右手の平を向け、
「この手に向かって撃ってくれ」
「うぇぇえええええええ!?」
再び目を剥く武器商さん。
「む、むむむ無理ですよ! そんなことできるわけがありません!」
「なぁ~頼むぜ」
「あははっ、じゃあ代わりに儂が撃ってやろう」
何を思ったのか、お師匠様が僕に杖を預けて割って入る!
「ぉおん? お嬢ちゃん、ノティアの知り合いかい?」
「ああ……まぁ、そんなとこさね。ほら武器商、そのマスケットを貸しな」
お師匠様は困惑気味の武器商さんから銃一式を受け取ると、慣れた手つきで紙の包み――何だろう?――を噛みちぎり、中に入っている粉末を銃身に流し込み、鉛らしきものの塊を銃身に差し込む。あぁ、いまの包みは弾薬と弾丸か!
そして、武器商から渡された棒で弾丸を銃身奥深くまで突っ込む。
「よし、じゃあ撃つよ。右手の平を狙えばいいのかい?」
「おう! 頼むぜ、お嬢ちゃん!」
言うなり、突き出したフェンリス氏の右手がまばゆい光を放ちだした!
目に見えるほど高濃度の魔力だ!
「じゃあ撃つよ」
お師匠様が射撃台に銃を乗せ、構える。
なんだか随分と様になっている。
「3、2、1……いま!」
パァーンッ――…
弾丸なんて速いモノ、見えやしない。
ただ、フェンリス氏は微動だにせず、自信満々に微笑みながら右手をグッと握り込んでいた。
「んっふっふっ……」
そのフェンリス氏が不敵に笑いながら右手を開くと、
……ぽろり
と、弾丸が零れ落ちた。
――――手の平には傷ひとつない。
「「「「「おぉおおお~~~~ッ!!」」」」」
僕もエンゾたちも武器商さんも周りの冒険者たちも、一斉に驚きの声を上げる。
「さすがはAランク冒険者!」
「いよっ、獣族一の戦士!」
冒険者たちがフェンリス氏を賞賛する。
あ、賞賛と言えば、見事にフェンリス氏の手の平に弾丸を当てたお師匠様の狙撃能力も賞賛されるべきで――…
「…………って、え?」
僕は、お師匠様の方を見て言葉を失う。
…………お師匠様が、盛大にすっ転んでいた。
反動にやられたのだろう、銃も離れたところに転がっている。
「……え、えぇええ~~~~ッ!? あれだけ得意げな顔してたのに!?」
「う、うるさい弟子さねぇ!」
お師匠様が気まずそうな顔をしながら立ち上がる。
「いつもは【闘気】で体を強化するから大丈夫なんだが、今は戦闘系スキルが使えないんでね」
「……へ? お師匠様って武術系のスキルも持ってるんですか?」
「【杖術】レベル4と【銃術】レベル5はあるよ」
「んんん? 【闘気】って武術の達人しか発現しないはずじゃあ……?」
「知らないのかい? 武術系スキルをレベル7以上にまで上げる以外にも、【魔力操作】スキルをレベル7に上げるのでも【闘気】は覚えられるんだよ。ノティアだって持っているだろう?」
「フェンほどじゃあありませんけれど、一応は」
……なんと。
ノティアが街やら森やら山やらを歩くときの軽やかな身のこなしを見てて、「運動もできるんだなぁ、すごい」とか思ってたものだけれど、【闘気】による身体強化だったのか!
「面白かったぜ、お嬢ちゃん!」
銃弾を素手で止めてしまったバケモノ冒険者のフェンリス氏が笑いかけてくる。
「とは言え……西王国の『真っすぐ飛ぶ銃』ってのも大したこたぁねぇな!」
フェンリス氏の言葉に、お師匠様はなぜだか一瞬、きょとんとした顔をしてから、
「……ああ、そうさね」
と言って笑った。
「町長様ぁ~~~~ッ!!」
そのとき、ミッチェンさんが射撃場に駆け込んできた。
「はぁ、はぁ……町長様、クリス様!!」
「ど、どうしました!? そんなに息を切らして――…」
「た、た、た、大変です!! 大変なんです!!」
「え……」
何でもそつなくこなせるミッチェンさんをして、顔を青ざめさせるだなんて、いったいぜんたい何が起こったというんだろう……?
「ぼ、亡命です!! 百人を超える難民が、街道を通ってこの街にやってきました!! 彼らは、食料とこの街での保護を求めています!!」
「はぁ!?」
傷ひとつついていない盾を背負ったAランク冒険者、『白牙』フェンリス氏の発現に、武器商さんが卒倒しそうな声を上げる。
「ってことで俺様の手を狙って撃ってくれ!」
言って的の方に向かうフェンリス氏に向かって、
「む、むむむ無理です! いくらこの銃でも、100メートルの距離では外す恐れがあります!」
「ん、そうなのか? んじゃあここで」
言って、銃口から数メートルの距離で仁王立ちするフェンリス氏。
やおら銃口に向かって右手の平を向け、
「この手に向かって撃ってくれ」
「うぇぇえええええええ!?」
再び目を剥く武器商さん。
「む、むむむ無理ですよ! そんなことできるわけがありません!」
「なぁ~頼むぜ」
「あははっ、じゃあ代わりに儂が撃ってやろう」
何を思ったのか、お師匠様が僕に杖を預けて割って入る!
「ぉおん? お嬢ちゃん、ノティアの知り合いかい?」
「ああ……まぁ、そんなとこさね。ほら武器商、そのマスケットを貸しな」
お師匠様は困惑気味の武器商さんから銃一式を受け取ると、慣れた手つきで紙の包み――何だろう?――を噛みちぎり、中に入っている粉末を銃身に流し込み、鉛らしきものの塊を銃身に差し込む。あぁ、いまの包みは弾薬と弾丸か!
そして、武器商から渡された棒で弾丸を銃身奥深くまで突っ込む。
「よし、じゃあ撃つよ。右手の平を狙えばいいのかい?」
「おう! 頼むぜ、お嬢ちゃん!」
言うなり、突き出したフェンリス氏の右手がまばゆい光を放ちだした!
目に見えるほど高濃度の魔力だ!
「じゃあ撃つよ」
お師匠様が射撃台に銃を乗せ、構える。
なんだか随分と様になっている。
「3、2、1……いま!」
パァーンッ――…
弾丸なんて速いモノ、見えやしない。
ただ、フェンリス氏は微動だにせず、自信満々に微笑みながら右手をグッと握り込んでいた。
「んっふっふっ……」
そのフェンリス氏が不敵に笑いながら右手を開くと、
……ぽろり
と、弾丸が零れ落ちた。
――――手の平には傷ひとつない。
「「「「「おぉおおお~~~~ッ!!」」」」」
僕もエンゾたちも武器商さんも周りの冒険者たちも、一斉に驚きの声を上げる。
「さすがはAランク冒険者!」
「いよっ、獣族一の戦士!」
冒険者たちがフェンリス氏を賞賛する。
あ、賞賛と言えば、見事にフェンリス氏の手の平に弾丸を当てたお師匠様の狙撃能力も賞賛されるべきで――…
「…………って、え?」
僕は、お師匠様の方を見て言葉を失う。
…………お師匠様が、盛大にすっ転んでいた。
反動にやられたのだろう、銃も離れたところに転がっている。
「……え、えぇええ~~~~ッ!? あれだけ得意げな顔してたのに!?」
「う、うるさい弟子さねぇ!」
お師匠様が気まずそうな顔をしながら立ち上がる。
「いつもは【闘気】で体を強化するから大丈夫なんだが、今は戦闘系スキルが使えないんでね」
「……へ? お師匠様って武術系のスキルも持ってるんですか?」
「【杖術】レベル4と【銃術】レベル5はあるよ」
「んんん? 【闘気】って武術の達人しか発現しないはずじゃあ……?」
「知らないのかい? 武術系スキルをレベル7以上にまで上げる以外にも、【魔力操作】スキルをレベル7に上げるのでも【闘気】は覚えられるんだよ。ノティアだって持っているだろう?」
「フェンほどじゃあありませんけれど、一応は」
……なんと。
ノティアが街やら森やら山やらを歩くときの軽やかな身のこなしを見てて、「運動もできるんだなぁ、すごい」とか思ってたものだけれど、【闘気】による身体強化だったのか!
「面白かったぜ、お嬢ちゃん!」
銃弾を素手で止めてしまったバケモノ冒険者のフェンリス氏が笑いかけてくる。
「とは言え……西王国の『真っすぐ飛ぶ銃』ってのも大したこたぁねぇな!」
フェンリス氏の言葉に、お師匠様はなぜだか一瞬、きょとんとした顔をしてから、
「……ああ、そうさね」
と言って笑った。
「町長様ぁ~~~~ッ!!」
そのとき、ミッチェンさんが射撃場に駆け込んできた。
「はぁ、はぁ……町長様、クリス様!!」
「ど、どうしました!? そんなに息を切らして――…」
「た、た、た、大変です!! 大変なんです!!」
「え……」
何でもそつなくこなせるミッチェンさんをして、顔を青ざめさせるだなんて、いったいぜんたい何が起こったというんだろう……?
「ぼ、亡命です!! 百人を超える難民が、街道を通ってこの街にやってきました!! 彼らは、食料とこの街での保護を求めています!!」