というわけで、お師匠様とノティアとの3人で、北の山脈への【瞬間移動】。
「せっかくだ、がっつり上流から分岐させて、あの場所の水問題を一挙に解決させてしまいたいさね」
確かに、西の森入口の市場に交易所や歓楽街や広がっていったら、水の需要がますます高まるだろう。
幸い、あの場所はこの大山脈からなる長い長い傾斜の延長線上にある。
猫々亭の隣あたりにぶっとい川を1本通してしまえば、それを中心にしてますます栄えてくれるというもの。
「ギャギャギャギャギャ……ッ!!」
不意に上空から恐ろし気な声が聞こえてきた。
「ヒッ……!?」
「みっともない声を上げなさんな。――風竜さね」
「ど、どどどドラゴン!?」
見上げると、はるか空高くで何かが飛んでる。
「この地じゃ常識だろう? 風竜が強すぎるが為に、科学王国にせよ魔王国にせよ自慢の飛行船や魔導船を持ち出すことができず、陸戦に終始した結果、魔の森――西の森――があんなにも小さくなったのさね」
「そ、そそそそんなドラゴンなんて、もし襲ってきたらどうするんですか!?」
あの、空を飛んでいるドラゴンが降りてきたらと、僕は気が気でない。
「そんときゃお前さんの【収納《アイテム》空間】で首を狩ってやりゃいいのさ。ほら、上ばっかり見てないで足元をちゃんと見な」
「は、はい――うわっ!?」
お師匠様の言う通り、ちゃんと足元を見ておくべきだった。
くぼみに足を取られて僕は転び、
そのまま、急な坂道を転げ落ちた。
■ ◆ ■ ◆
「……ぅ……ぁ……?」
気がつけば、仰向けに寝っ転がっていた。
全身が痛い。
けれど、お師匠様がくれた装備のおかげか、骨を折ったりとか、致命的な傷を受けたりはしていないようだ。
「い、いたたたた……お、お師匠様たちと合流しなくちゃ……」
ふらつきながらも立ち上がり、そして、
「グルルルルル……」
気づいた。
――――目の前に、風竜がいることに!
「ヒッ……」
食事中、だったのだろうか。土色とも黄色とも言えそうなウロコの、その口元が真っ赤に濡れている。
咄嗟に逃げようとしたところを、
「ギャァアアアアオオォォォォォオオオオオオオオオオッ!!」
咆哮ッ!!
あまりの大音声に脳が震え、目の前がチカチカして、竜の咆哮に乗った巨大な魔力が大気を震わせ、着込んでいる鎖帷子が共鳴したかのように激しく振動する。
僕は、ピクリとも動けない。
【威圧】スキル。
風竜の放つ恐ろしい【威圧】を浴びせかけられて、一歩も動けない。
ずしん、という音とともに、風竜が一歩近づいてくる。
「あ、あ、あ……」
ずしん、ずしん、と近づいてくる。
「あいてむ……ぼっくす!」
魔法は発動しない。
ダメだ、このままじゃ食い殺されてしまう、集中、集中しろクリス――ッ!!
迫りくる風竜の首を睨みつけながら、
「――【収納空間】ッ!!」
バチンッ――と、風竜の首元で真っ白な光が弾ける。
抵抗された!
ずしん、ずしん、ずしん。
「集中!」
お師匠様に鍛えてもらったありったけの魔力を丹田から引きずり出し、両手のひらに集め、手を風竜に向ける。
「――【首狩り収納空間】ッ!!」
僕の全力の魔法は果たして、
――――バチンッ!!
…………抵抗、された。
「あ、あぁ……あぁぁぁぁ……」
風竜が目の前に立つ。
巨大な口が開かれ、鋭い牙がぬめった光沢を帯びているのが見える。
「あぁ……お師匠様……」
風竜が、僕の頭にかぶりつく――
「せっかくだ、がっつり上流から分岐させて、あの場所の水問題を一挙に解決させてしまいたいさね」
確かに、西の森入口の市場に交易所や歓楽街や広がっていったら、水の需要がますます高まるだろう。
幸い、あの場所はこの大山脈からなる長い長い傾斜の延長線上にある。
猫々亭の隣あたりにぶっとい川を1本通してしまえば、それを中心にしてますます栄えてくれるというもの。
「ギャギャギャギャギャ……ッ!!」
不意に上空から恐ろし気な声が聞こえてきた。
「ヒッ……!?」
「みっともない声を上げなさんな。――風竜さね」
「ど、どどどドラゴン!?」
見上げると、はるか空高くで何かが飛んでる。
「この地じゃ常識だろう? 風竜が強すぎるが為に、科学王国にせよ魔王国にせよ自慢の飛行船や魔導船を持ち出すことができず、陸戦に終始した結果、魔の森――西の森――があんなにも小さくなったのさね」
「そ、そそそそんなドラゴンなんて、もし襲ってきたらどうするんですか!?」
あの、空を飛んでいるドラゴンが降りてきたらと、僕は気が気でない。
「そんときゃお前さんの【収納《アイテム》空間】で首を狩ってやりゃいいのさ。ほら、上ばっかり見てないで足元をちゃんと見な」
「は、はい――うわっ!?」
お師匠様の言う通り、ちゃんと足元を見ておくべきだった。
くぼみに足を取られて僕は転び、
そのまま、急な坂道を転げ落ちた。
■ ◆ ■ ◆
「……ぅ……ぁ……?」
気がつけば、仰向けに寝っ転がっていた。
全身が痛い。
けれど、お師匠様がくれた装備のおかげか、骨を折ったりとか、致命的な傷を受けたりはしていないようだ。
「い、いたたたた……お、お師匠様たちと合流しなくちゃ……」
ふらつきながらも立ち上がり、そして、
「グルルルルル……」
気づいた。
――――目の前に、風竜がいることに!
「ヒッ……」
食事中、だったのだろうか。土色とも黄色とも言えそうなウロコの、その口元が真っ赤に濡れている。
咄嗟に逃げようとしたところを、
「ギャァアアアアオオォォォォォオオオオオオオオオオッ!!」
咆哮ッ!!
あまりの大音声に脳が震え、目の前がチカチカして、竜の咆哮に乗った巨大な魔力が大気を震わせ、着込んでいる鎖帷子が共鳴したかのように激しく振動する。
僕は、ピクリとも動けない。
【威圧】スキル。
風竜の放つ恐ろしい【威圧】を浴びせかけられて、一歩も動けない。
ずしん、という音とともに、風竜が一歩近づいてくる。
「あ、あ、あ……」
ずしん、ずしん、と近づいてくる。
「あいてむ……ぼっくす!」
魔法は発動しない。
ダメだ、このままじゃ食い殺されてしまう、集中、集中しろクリス――ッ!!
迫りくる風竜の首を睨みつけながら、
「――【収納空間】ッ!!」
バチンッ――と、風竜の首元で真っ白な光が弾ける。
抵抗された!
ずしん、ずしん、ずしん。
「集中!」
お師匠様に鍛えてもらったありったけの魔力を丹田から引きずり出し、両手のひらに集め、手を風竜に向ける。
「――【首狩り収納空間】ッ!!」
僕の全力の魔法は果たして、
――――バチンッ!!
…………抵抗、された。
「あ、あぁ……あぁぁぁぁ……」
風竜が目の前に立つ。
巨大な口が開かれ、鋭い牙がぬめった光沢を帯びているのが見える。
「あぁ……お師匠様……」
風竜が、僕の頭にかぶりつく――