「な、なんてこと……」

 シャーロッテは本を縦読みして言葉を失っていた。
 本当に、それはそれはおぞましい内容ばかりだからね……。

「それで、お師匠様の真意が知りたくなって、遺書か何かでも持ってないかと気になったんだよ」

「なるほどね。それにしてもクリス、手つきがいやらしいわよ?」

「そ、そう!?」

「そうか……クリスとその、するときはあたしも、こんな手つきで脱がされるのね」

「き、気が早いよ!」

 シャーロッテと一緒になってお師匠様のシャツを脱がし、ズボンを脱がしていると、

「あぁクリス君、こんなところにおりましたの」

 ノティアが部屋に入ってきた。

「ってぇ、ななな何してますのふたりして!? クリス君がアリスさんに惚れていたのは分かってましたけれど、まさかシャーロッテちゃんまで!?」

「「ち、違うって!」」


   ■ ◆ ■ ◆


「なんてこと……」

 そうして今度は、ノティアが本を縦読みして絶句するという流れ。

「これはもう、半端な講和なんて結ばずに、王室丸ごと【収納】してやれば良いのでは?」

「いや、う~ん……いまの僕ならできなくもないだろうけど、じゃあ誰が国を治めるのって話になるし。ってシャーロッテ、何してるの!?」

 シャーロッテがお師匠様の下着にまで手を伸ばしてる!

「いやぁ、ここまで来たら全部見てみたいなって。アリスさんの肌って本当に綺麗だから」

「シャーロッテちゃん……あなたやっぱり」

「違いますって! でもノティアさんも、興味あるでしょう?」

「ええ」

 ……あるのかよ。


   ■ ◆ ■ ◆


 そうして、いま。
 ベッドの上には、神秘的なまでに美しいお師匠様の裸体がある。

「なんとも理想的な体形ですわねぇ! 出るところはしっかり出ていて、引っ込むところはよく引き締まっていますわ」

「あ、あわわわ……アリスさんって着痩せするタイプだったのね」

 確かに、お師匠様のバストはすごかった。
 それはもう見事な形をしていて、シャーロッテに叩かれながらも凝視してしまった。
 そして、お師匠様の下腹部にはその――…女性器、が付いていなかった。
 そう言えば初めて『魔力養殖』をしたあの夜、お師匠様は『儂の体をどうこうするのなんて無理』とか何とか言ってたっけ。

「いやいやそうじゃなくって! 当初の目的を忘れちゃダメだよ」

「でも、ヒントになりそうなものは、いまのところありませんわねぇ」

 ベッドの上には、一(ちょう)の小銃と、二挺の拳銃、弾薬(ごう)と、豪華な刺繍の入った巾着――マジックバッグだ。

「最後はマジックバッグの中身だね。じゃあお師匠様と服は【収納】するよ」

「えぇっ!? もう少し見ていたい!」

「えぇぇ……」


   ■ ◆ ■ ◆


 何もなくなったベッドの上に、マジックバッグをひっくり返して魔力を流すと、

 どさどさがちゃがちゃ!

 と、山のような銃火器と弾薬が出て来て、最後に、

 ……カララン

 と、2枚のレコードが出てきた。


   ■ ◆ ■ ◆


「どこから話そうかねぇ」

 お師匠様の部屋に持ち込んだ手回し蓄音機から、お師匠様の声が聞こえる。
 本当に、懐かしい……ほんの数日ぶりだというのに、涙が出てきた。

「最初から話すとしようか。長くなるけれど、付き合ってくれるかい?」


   ■ ◆ ■ ◆


 ……長かった。
 どのくらい長かったかというと、食事・睡眠を挟みつつ、聞き終わるまでに2日掛かるくらいに長かった……蓄音機を回し続けて腕が疲れたよ。

 ――――それは、お師匠様が誕生し、意志を持ち、アルフレド王国に搾取され続ける物語だった。