気がつけば、儂は何もない真っ白な空間にいた。


 ――我が魂に近しき形をした者よ。我との合一を望むか。


 そして目の前には、魔法神アリス――懐かしい、懐かしいマスターの姿があった。

「あぁ……あぁぁぁ……マスター、マスター!!」

 儂が人の体を持っていたなら、きっと号泣しているに違いなかった。


 ――我が魂に近しき形をした者よ。我との合一を望むか。


 魔法神として世界システムに組み込まれ、喜怒哀楽を失ったマスターの声はあくまで平坦で、その表情は変わらない。
 けれどこの感じ……この、一緒に居て安らげる感覚は、昔と何も変わらない。

「あぁ、あぁぁ……望む! 望みます!! マスター!!」


 儂の体が、優しい光に包まれる。
 やっと、終われるんだ。
 やっと、この地獄から解放されるんだ――

 幻かもしれない。
 けれど儂には、マスターの口が、こう動いたように見えた。





 ――――――――お、か、え、り。





「ただいま……ただいまッ!! マスターッ!!」

 こうして、儂は数千年に及ぶ役目を終え、意識を手放した。