煮え切らない答えを返すと、沙那先輩は不愉快そうに腕を組んで眉根を寄せた。もともとツリ目がちなこともあり、それだけで威圧感が倍増しになる。

「一ヶ月も姿を見せないと思ったら、突然またやってきて凝りもせず結生のストーカー。いいご身分ね。何様だと思っているのかしら」

 おーっと……?
 これはもしや、ただ単に嫌味を言われるためだけに呼び出された口だろうか。

「ストーカーだなんて、やだなあ。そんなんじゃありませんよ」

「付き纏ってるじゃない」

「部活動に勤しんでいるだけです」

 実際私は、あの屋上庭園以外でユイ先輩と会うことはほぼないのだ。
 ユイ先輩は他人と最低限しか関わらないし、猫のように気まぐれな一面を持っているから、放課後以外はどこでなにをしているのか見当もつかない。
 そりゃあ、他の人に比べれば相手をしてもらっている自覚はあるけれども。

「……でもあなた、結生が好きなんでしょう?」

 直球だなぁ、と私は一周回って感心する。

「好きですけど。それとこれとは関係ありませんよね?」

「あるわよ。結生を傷つける女を、あたしがみすみす見逃すわけがないじゃない」

「えー……沙那先輩ってユイ先輩のなんなんですか……」

 常日頃から感じていたことだが、元カノにしては少々執着が過ぎる気がする。
 思わず嘆息しながら肩を落とすと、沙那先輩は苛立ったように鼻を鳴らした。

「残念ながらなんでもないわよ、あなたと一緒でね。いまは大事な友人、って立場から言わせてもらってるけど」

「ゆうじん」

「なによ。いいでしょ、それしか関係性が見つからないんだから」

「でも、沙那先輩はまだユイ先輩のこと好きなんですよね?」

「はあ!?」

 意趣返しというわけではないが、この機会だ。常々思っていたことを尋ねてみる。

「だから、私が気に食わないんでしょう?」

「ッ、あのねぇ、こっちはもうずっと前に別れてるのよ! 大体フッたのはあたしの方なんだから、人聞きの悪いこと言わないでちょうだい!」

「えっ、そうなんですか!?」

 それは初耳だ。正直、あのユイ先輩がフられるという場面をまったく想像したことがなかった。

「考えてもみなさいよ。あの人形が自ら相手をフるなんて労力を使うと思う?」

「にんぎょう……」