第五章 「生きてくださいね」
枯桜病は、不治の病だという。
何年ほど前だったか、一時期やたらと世間を騒がせていた病だ。
突如現れた未知の病。枯桜病なんていうやたらと美談じみた俗称をつけられたのも、各種メディアで話題にのぼりやすくするためだ。
そもそも罹患者が少ないこともあり、原因も治療法もいまだ確立されていない。
枯桜病の患者に共通しているのは、時と共に全身の機能が衰退していくこと。そして、眠ったまま死に至ることだろう。
死に近づくにつれ睡眠時間が増える。最期には痛覚もほぼ機能しなくなっているため、痛みも苦しみも感じることなく、ただ穏やかに眠るのだという。
──……それを、理想の死に方だという奴がいる。