口が潰されているせいで、上手く発音ができない。
 そんな私にふたりは思わず、といったようにぷっと吹き出しながら、それでも隠しきれず涙を溜めて、両側から私をぎゅっと抱きしめてくる。

「鈴ちゃんが大好きだからに決まってるよ」

「どんな病気だろうが鈴は鈴じゃん。突き放そうとしないでよ、お願いだからさ」

「っ……ふたりとも……」

 無性に、泣きたくなった。というか泣いていた。
 ふたりの涙につられて、頬に数粒、まるで朝露みたいに雫が伝う。
 心配をかけるから、なるべく泣かないようにしてきたのに。
 どうも最近は、泣いてばっかりだ。

「ありがとう……私も、大好きだよ」

 ──私には、傷つかずに死を迎える方法なんてわからない。
 残していく側も、残されていく側も、きっとすごくつらい思いをする。
 深い深い、一生拭いきれない傷を刻むことになる。
 人の死、とはそういうものだ。
 だけど、どんなに傷ついても、今この瞬間がなかったことになるのは嫌だった。
 私のわがままを貫き通してまで通った学校で、こうして大好きだと言えるふたりと出会えたことは、きっと私にとっての宝物のひとつだから。
 それを、後悔なんて、したくなかった。