「んねー。まあでも、あれがあったから、あたしたちは鈴の病気を知ることができたわけだし。今となってはよかったなって思うよ。その場に居合わせてて」

 かえちんの飾らない素直な言葉に、私は思わずくすりと笑った。
 見た目も中身もボーイッシュな性格のかえちんは、一見冷たい印象を覚えられがちだけれど、意外と優しさの塊だったりする。
 そんなツンデレなところが私と円香のつぼに入り、ここまで仲良くなった。
 なんというか、バランスがよいのだ。私たちは。

「……私も、ふたりに話せてよかったって思ってるよ」

 発病してから高校に入学するまで、私は病気のことをひた隠しにし続けてきた。
 もちろん学校の先生は知っていたし、相応の配慮はしてもらっていたけれど、中学の頃はそれを知られるのがひどく怖かった記憶がある。
 多感な時期だから、というのもあるだろう。
 なんとなく、自分が異質な存在として扱われるのが我慢ならなかった。
 知られてしまったら、友だちがいなくなるんじゃないか。腫れ物のように扱われるんじゃないか。そんな恐怖が、いつも心のどこかを巣食っていた。
 でも、実際にこうして打ち明けてしまえば、なんとも気楽なものだった。
 もちろん相手がふたりだから、というのもある。このふたりなら話しても大丈夫だと思うことができたから、私は病気のことを包み隠さず打ち明けた。
 きっと傷になってしまうだろうと、そういう躊躇は、いまだにあるけれど。
 一方で、今は変に隠してしまう方がふたりを傷つけるとわかっている。
 だから、ちゃんと話さなければならない。今の状態も、これからのことも。
 ふたりはきっと、気にしているだろうから。

「──あのね、円香、かえちん」

 私は広げていたノートの上にシャーペンを置いて、ゆっくりと切り出した。
 試験勉強の準備をしていたふたりも、その神妙な空気を察したのか、手を止めて聞く体勢を取ってくれる。
 ほんの少し顔が強張っているものの、聞かないという選択肢はないようだった。

「私、八月からまた入院するんだけど」

「検査のだよね? 前に言ってた……」

「うん、そう。でもたぶん、もう戻ってこられないと思うんだ」

 ふたりがひゅっと息を詰めた。
 心なしか青褪めながら、円香が胸の前で手を組んで俯く。

「退院できないってこと?」