けれど覚えていることだってある。それと今の喜一がピタリと当てはまってしまう。

 喜一が帰ってきたのは、午後九時過ぎで、帰るよって連絡があってから家に着くだろう時間を見積もって準備を始め、すぐに食事に取り掛れるようにした。

 帰ってきた喜一と手を合わせ、のんびりテレビでも見ながら食事をしている彼を窺う。特に変なところはない。美味しい美味しいといつも通り食べてくれている。

「喜一さ、なんか飼いたい動物いないの?」

 何となく聞いてみたが、怪訝そうに首を傾げられた。

「いきなりどうした? なに、欲しいの?」
「まあ欲しいと言えば、いつでも欲しいけど……。喜一は?」
「うーん、飼ったことないからなあ」
「でも前、ジャンガリアンハムスター飼ったって言ってたよ?」
「うそ? 飼ったことないよ、ああ、でも……」

 やっぱりあるのだろうか。神妙な顔つきで箸を置き、テレビの電源まで切って向き直ってくる。

「同僚に似たような質問をされたことあったよ、なんか人が変わってるときがあるみたいなんだ」
「人が……」