私は彼の手を持ちながら胸に手を当てた。心臓の音を感じられるだろうか。夫の目を覗き込む。

「あなたとの恋は、愛に変わった。優しくて穏やかなあなたのようになりたいと思った。……だからね、あなたを捨てて永と一緒になりたいなんて、思ってない。彼は確かに大切な人だったし、今もこうして出会えたことに驚いてる。でも一生を共にしたいとは思ってない。私も、彼も、決着をつけたいだけ」

 喪失感に終止符を打つ。それが、私の答え。あの日々の私に、苦しくて死にたいと思っていた私に、花を添えたい。賞賛してあげたい。
 周りにたくさん否定されたけれど、あの日々の私たちは確かにお互いのために生きていたから。

「だから、永を、殺す」

 永にも花を。
 私のところへ来た永。バンドメンバーのところでも、初恋の相手のところでも、家族のところでもない。それほど彼もあの日々に囚われ、私のことを忘れられなかった。

 だから、もういいって、終わったんだよ……と、伝えたい。

「それが私のしたいこと。……喜一の身体から消すよ」