昼前に起きてきた喜一と肩を並べてコーヒーを飲む。喜一は少し甘めのカフェオレ。ぼうっとテレビを見て、しばらくしたら昼ご飯を食べ始める。
この休日が何よりも好きだ。
録り溜めたドラマを見て、二人で考察や感想を言い合う。正確には私が一方的に言い、ああ、と納得したように彼が相槌を打つ。ただそれだけだが楽しい日常。
しかし、空気が変わる。
「永って、誰?」
不意に喜一が聞いてきた。私の心臓は大きく跳ね、持っていたコーヒーを少し零してしまう。傍にあったティッシュで慌てて拭き、えっと、と声を出す。さっきまでコーヒーを飲んでいたのに喉がカラカラ。
どう話そう。何から言えばいいだろう。一瞬の内に思考を巡らせていると「ゆっくりでいいよ」と言われる。
それが、逃れられないのだと思い知らされ、諦めに似た冷静さが戻ってくる。
「変な感覚があるって言っただろ? まるで夢の中にいるような感覚なんだけれど、食べてるものとか、触ったもの、例えば頬を撫でる風がリアルでさ。それで、聞こえたんだよ。永って名前が……やけに、耳に響いた」
うん、としか言えなかった。
浮気じゃない。浮気じゃない。浮気じゃ、ない。
言いたいのに心臓がバクバクと音を立てる。本当に浮気じゃなかった? 頭のどこかで問いかけられる。
この休日が何よりも好きだ。
録り溜めたドラマを見て、二人で考察や感想を言い合う。正確には私が一方的に言い、ああ、と納得したように彼が相槌を打つ。ただそれだけだが楽しい日常。
しかし、空気が変わる。
「永って、誰?」
不意に喜一が聞いてきた。私の心臓は大きく跳ね、持っていたコーヒーを少し零してしまう。傍にあったティッシュで慌てて拭き、えっと、と声を出す。さっきまでコーヒーを飲んでいたのに喉がカラカラ。
どう話そう。何から言えばいいだろう。一瞬の内に思考を巡らせていると「ゆっくりでいいよ」と言われる。
それが、逃れられないのだと思い知らされ、諦めに似た冷静さが戻ってくる。
「変な感覚があるって言っただろ? まるで夢の中にいるような感覚なんだけれど、食べてるものとか、触ったもの、例えば頬を撫でる風がリアルでさ。それで、聞こえたんだよ。永って名前が……やけに、耳に響いた」
うん、としか言えなかった。
浮気じゃない。浮気じゃない。浮気じゃ、ない。
言いたいのに心臓がバクバクと音を立てる。本当に浮気じゃなかった? 頭のどこかで問いかけられる。