「行ってくれるんだ?」
「弔いだろ? 行くよ」
「ありがとう。ねえ、永は……。……やっぱり、何にもない」
「何だよ、気になるだろ」
「さ、かーえろ」

 ぼやいている彼の前に出て、歩き出す。もう日が落ちてきている。セミの鳴き声もいつの間にか違う虫の声に変わっている。

 ねえ、永は、どう思ってた? あの日々のこと、私という存在のことを。

 そんな、不毛なことを聞きそうになってやめた。聞いたところで何も変わらない。もう終わったことなのだから。

 翌朝になると、喜一に戻っていた。家に帰った途端に永はベッドに入り、眠ったのだ。まだ午後八時のこと。

「寝るの?」
「うん。俺の体じゃないから、凄い疲れるんだ」

 そう言い終わるや否や、もう寝息を立てていた。
 彼が起きている間、喜一は眠っていると言っていたから、身体の持ち主が眠っているのに無理やり身体を動かしているものなのだろうか。

 けれど、寝てくれて安心した。夜を彼と過ごすということは、何もしなくても浮気になるのでは、と恐れたから。