永って、腹を抱えて笑うんだ。

 失礼だということは百も承知だが、驚いた。静かに笑ってくれることはあっても、こんな風に、同年代の男の人のように、あるいは少年のように笑う。
 近い。遠い、と感じていた距離が近く感じる。

「夏菜子?」
「あ、いや……。インスタント麺も食べるの?」
「当たり前だろ」

 まだ笑っている。ツボに入ったらしいが、まあでも、と口にしてようやく止まった。

「俺も、夏菜子とラーメンを食べるなんて思わなかった。身近なものを、隣に並んで食べるなんて、あの時の俺たちが見たら驚くよ。なんか、当たり前だけれど、俺たち本当にこの日本にいたんだな」

 ちょうどその時、ラーメンが運ばれてくる。おお、と隣から喜ぶ声が聞こえ、私も写真を一つ撮ってから割り箸を割った。

 ふと、その時、永……厳密には、喜一だが、彼の写真を撮りたくなって、ラーメンを啜る横顔を撮ってみた。

 やっぱり喜一。けれど、永は短い髪を耳にかけようとしていて、普段髪が長かったと分かる。