男女が入るには落ち着きのない、ラーメン店に入ることにした。店内は狭いのに賑わい、私たちはカウンター席の端っこに追いやられる。

 豚骨ベースの醤油ラーメンを、永はもう少しボリューミーにチャーシューがたくさん入ったものを注文した。

 あいよー、という掛け声で店員が去っていくと、彼が口を動かす。

「びっくりした、ラーメン屋に入りたいなんて言うから」
「えへへ、ラーメン好きなんだよね。色気も素っ気もないけど」
「いや? 夏菜子らしいよ」
「どういう意味よ」

 ぷくっと頬を膨らませれば笑ってくれる。ほんわかした空気に自然と頬が綻んだ。

「こっちこそ意外だよ。永がラーメン食べるなんて思わなかった」
「何だそれ? 特別好きじゃないけど、食べるよ、ラーメンくらい」
「なんか……もっとこう……神聖なもの食べてそう」
「何だそれ!」

 ハハハ、と声が弾けた。驚いて彼に視線が行ってしまう。腹を抱えて笑っている。周りの声が騒がしいのに、その声が妙に耳に入ってくる。