ちょっと細い垂れた目と目が合う。蝉の鳴き声が、私の胸のときめきを隠すようにうるさく鳴く。

「や、やだなあ、何いきなり?」

 ごつごつとした手に無理やりハンカチを持たせ、離れた。顔が熱い。日差しも強いから、余計に熱がこもってしまう。

 まるで違う人みたい。

 それからも、突然私を名前で呼ぶことが増えた。男らしさを出したいのかな、と呑気に思っていた頃、仕事の休憩時間だろう彼からメッセージが届いて、酷いデジャブに襲われる。

──今日もお弁当作ってくれて ありがとな。美味しいよ。

 見覚えのある文字の羅列。正確には、文章の間にスペースを置くその並びに、懐かしさに見舞われ、激しく鼓動が高鳴った。目眩がする程に湧き上がる懐かしさに、私はスマートフォンをソファーに放り投げた。

 喜一、だよね? 喜一のはず……。

 最初は、本当に些細なこと。特別好きでもなかったカレーをやけに食べたがったり、動物を飼ったことないはずなのに、ハムスターを飼いたがったり。