「でもどうして私ってわかったの? この世に夏菜子さんはたくさんいるよ」
「そんなの、お前が俺って分かったのと同じだよ」

 そうか。そりゃあ、そうだ。

「ゾンビでもいいよ、もう一度会えたんだから」

 私たちは幼い友達のように手を繋ぎ、立ち上がると身支度を始めることにした。こんなボサボサの頭でよくも話が出来ていたものだ。ぴょんぴょん飛んだ髪の毛を永に小突かれ、恥ずかしさで顔を赤くした。

 海に行こうと言い出したのは、私。二十分ほど歩けば海には辿り着けるから、おしゃべりしながら並んで歩く。

「高校卒業してから全然就職出来なくて、しばらくフリーターしてたんだよ」
「好きな食べ物が変わったんだよ」
「今の職場はね、結構闇深くて、幽霊が出るって噂があるんだ」

 どれもこれも私の他愛のない話に楽しそうに相槌を打ってくれる。
 夏の日差しに負けないくらい輝いて見える。喜一の顔だから、というのもあるが、嬉しい楽しいと溢れ出る感情がそう見せているらしい。すっかり私の中のリミッターは外れていた。