大切だった。あの日々は、輝いていた。それはきっと彼も同じで、私たちは瞬く間に恋に落ちる。

「俺、死んだんだよ」

　美しき幻のようだったあの日々に戻りかけたが、すぐに現実へ戻される。目の前のかつての好きだった人は、視線を落として続ける。

「女に突き飛ばされたんだ」
「……彼女？」
「そうだな。問い詰めた場所が悪かったよ、相手が浮気をしてたから問い詰めた。そしたら逆上した女に道路に投げ出された。交通事故だったよ、俺らしい最期だろ？」
「そんな……そんなこと」
「死にそうな意識の中で、お前が真っ先に浮かんだんだ。……顔も知らないのにな。信用出来る誰かを見つけて……必死に、文字なのに、所詮ネットの奴なのに、一生懸命言ってくれてたなって、薄れてく意識の中でずっと考えてた」

　私は、頷くことしか出来なかった。
　当時の彼は、いわゆる人間不信に陥っていた。彼女を作っても浮気される。初恋の相手とやっと付き合えても浮気される。その浮気相手は親友だったりする。そんな仕打ちを色んな人から繰り返され、人間不信に陥っていた。