日曜日。限りなく透き通らせた青が一面を支配する空が頭上に広がっている。絶好のバーベキュー日和だ。

「美咲ーちょっとは持ってよ!」
「ちょっとはって、私もうすでに4袋も持ってんだけど!」
「暑いー、溶けそう」

 両手に食材を詰めた袋を四袋も持つ私に、ぶつぶつと不平不満を漏らす瑠衣が後ろからとぼとぼとついてくる。 

 私と瑠衣、そして葉山くんを含め十人。近くのスーパーでバーベキューの買い出しを終わらせた私達は、両手に荷物を引っ提げ額に汗を滲ませながら川へと向かっていた。

 私は、昨日瑠衣がコーディネートしてくれた服装で全身を包んだ。待ちあわせ場所で、私をみた葉山くんが開口一番に「そっちの方が日高らしくて似合ってると思う。可愛いじゃん」と言ってくれたことで恥ずかしさと嬉しさのあまりトイレに駆け込み、ひとり小さくガッツポーズしたのはここだけの話。「瑠衣ありがとう」と神様にお祈りするみたいに手を合わせた。

「日高と大橋はほんとに仲良いな。見てて微笑ましいよ」
 葉山くんはそう言ったあと、白い歯をみせて笑った。

「そうだね、仲は良すぎるくらいかも」

 足元の感触がアスファルトから砂利道へと移り変わった時。

「あっみえたよ」

 葉山くんが指を差すので、私もその方向に視線を向ける。大小様々な木々に囲まれ、その真下に流れるのは清流と呼ばれるに相応しい程に水の透き通った綺麗な川。所々木漏れ日が射し込み、まるでひかりのカーテンが川のせせらぎで揺れてるかのような、その美しい光景に私は思わず息を呑み、言葉を失った。時折ひんやりとした冷たい風が顔に触れ、さっきまでの暑さが嘘みたいだと思った。 

 川岸には既にクラスメイト達が和気あいあいとしてる。三十一人中、二十九人。瑠衣の提案から始まったこのバーベキューだが急な誘いにも関わらずよくこれだけ集まってくれたなと思う。みんなの楽しそうな顔が目に映ると、なんだか私も嬉しくなり、瑠衣と共に足早に駆け寄った。

「じゃあ、やるか!」

 葉山くんの一声でクラスメイトが一斉に動き出す。料理担当、火起こし担当、テントや小物担当と各自役割を決め、各々バーベキューを早く始めるためにと、手を止めることなく準備を早々に終わらせた。

「最高、これすっごく美味しいよ」

 私と瑠衣は網の上で焼けた牛肉を何枚か皿に載せ、近くの椅子に腰をかけていた。 箸で一枚掴み、タレと肉汁が滴るそのままに口に入れた瞬間、瑠衣は天を仰いだ。

 炭の匂いが辺り一面に漂うも、川や森の匂いがそれだけとさせない最高の空間。そして美味しいお肉や野菜に魚介類、何より友達に囲まれた私は、今この瞬間を噛みしめるように味わっていた。