春。

 それは、受験を意味する。焦燥感に煽られ、不安に駆られ、虚無に陥る。

 それは、卒業を意味する。今まで一緒だった仲間と初めて離れて、馴染みの場所を飛び立つ。

 それは、出会いを意味する。今まで触れ合えなかったものに手を伸ばし、未来への可能性を切り開いていく。

 春とは、怖くて、切なくて、淋しいけれど、楽しくて、どうしようもなく心が踊る。そんな季節は、時に不思議なことでさえ、呼び覚ましてしまう。

 甘く、苦く、そして胸を振るわせる、摩訶不思議なことを。