耳をつんざくような爆発音とともに、地獄の扉が開いた。地獄の扉はバックドラフトを起こして、罪人の体を黒く焼き焦がした。



 ある中年の耳を不協和音が襲った。中年は幼少期に近所の犬を殺した。学生時代は非行に走った。悪知恵のある男は社会人になって有名ベンチャー企業で若くして死ぬまでに役員に出世したが、犯罪まがいのパワーハラスメントによって精神を深く病んだ者も少なくない。眩暈がするような不協和音に、中年は嘔吐した。それでも、中年は這いつくばってでもこの門をくぐらねばならない。罰を受けるために。



 殺人鬼が扉の前に立つと、彼が殺した者たちの断末魔が聞こえた。シリアルキラーはゲラゲラと笑った。殺した者たちの悲鳴を思い出すと、食欲と性欲が刺激される。彼は舌なめずりをした。しかし、彼は知らない。この先、何億年、何兆年、何極年にも渡って拷問を受けることを。彼自身が悲鳴を上げ続けることを。



 一目見ただけでは男とも女とも分からぬ、無気力な者が扉の前に立った。形容しがたい恐ろしい怪物の声とともに、地獄への門が開く。この者はどんな罪を犯したのか。答えは自殺である。自ら命を絶つことは、殺人に匹敵する重罪とされている。



 魔女のような出で立ちをした老婆が扉の前に立った。彼女は生前、法を何一つとして犯してはいない。扉が開いたが、彼女には何も聞こえない。しかし、突如彼女は血を吐いた。

 老婆には聞こえない音波が、彼女の内臓を破壊したのだ。彼女は地獄でも、見えない凶器によって永遠に罰を受け続ける。

 人間界の現行法で彼女を裁くことはできない。彼女は多くの人間に呪いをかけ、無数の命と人生を蹂躙した。ある時は身近な人を、ある時は見知らぬ誰かを呪った。悪魔を召喚し、呪いをかけた誰かの運命を嘲笑った。

 冥界の裁きにおいて、呪殺はまごうことなき殺人とみなされる。